2010年5月30日 (日)

日本版電子書籍は「自炊」から普及する?

 久々に、電子ガジェットモノの話題。

 先輩診断士に触発されて購入した、ポータブルスキャナー「SCANSNAP S300」。これで名刺をスキャニングさせて、同梱の管理ソフトで一元管理を始めたところ、大変重宝している。

 加えて、今までは捨てようかどうか迷っていたセミナーの資料なども、スキャニングで電子化することで心おきなく廃棄することができるようにようになった。

 これにはルー大柴もベリーサプライズ(宣伝用動画だが)、ジェットダイスケも名刺の山がスッキリできて感心しきりだ。

ところで、この書類専用スキャナー、別の使い方がひそかにブーム(死語?)との事。その使い方とは、「漫画やマニュアル本をごっそりスキャニングして、本棚をスッキリさせよう!」というものだ。

 その活用方法を知ったのは昨年の7月、ガジェットマニア「スタパ斎藤」のTV番組。裁断機で背表紙を切り取った書籍を、S300よりもワンランク上の機種であえる「S1500」を使用することで、短時間で電子化してしまおう、というものだ。

※YouTubeは埋め込みコード無効のため、リンクのみ案内。

http://video.watch.impress.co.jp/docs/stapa/20090721_303244.html

↓「S300」の後継機種「S1300」も最近紹介されている。

http://video.watch.impress.co.jp/docs/stapa/20100420_362262.html

↓どれくらい早いかは、下記の動画を参照のこと。

この商品のヒットのおかげで、PLUSの業務用裁断機まで売れているとのこと。

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 そんな、マニアだけのひそかなブームであったものが、ここに来て俄然広がりを見せつつある。iPhone、さらにはiPadの登場によって、コミック雑誌をPDF化し(この行為を「自炊」というらしい)、これを持ち歩くというという形での「電子書籍」がジワジワと広がるというのだ。

 池田信夫氏は、「10年ほど前、Napsterというソフトウェアが世界のレコード会社を震撼させた」ように、書籍の自炊ファイルが、「iPadの「キラーコンテンツ」になるだろう」。と予想している。

池田信夫blog 『「自炊」でできる電子書籍』 2010年05月19日

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51422733.html

 私の場合、電子媒体で本を閲覧するという興味もさることながら、日に日にスペースを圧迫する書籍の山をどうしようか図りかねているところだ。

 しかし、仕事がら大概の本はハードカバーのビジネス書。これを裁断機で背表紙をバッサリ、というのはためらってしまう。まずは雑誌から手をつけるとするか・・・。

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2010年5月 1日 (土)

グーグルも基本は”売上=客数×客単価”

 一昨日に続いて、グーグルに関する書籍を読んだ。その名もズバリ、『Googleの正体』。

 『アップル、グーグル、マイクロソフト』の著書でも書いてある通り、グーグルのDNAはとにかく「情報を収集し、整理すること」。その先で、一体何をしたいのか、何ゆえあらゆるサービス(グーグルMAP、グーグルアース、そしてOSのクロームなど)を無償提供し続けるのか、いずれの著者も図りかねているところに、グーグルの企業としてのユニークさがある。

参考ブログ) 『アップル、グーグル、マイクロソフト』 2010年4月29日 (木)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-8b4f.html

 少なくとも確実にいえるのは、グーグルの主たる収益源は広告収入であること。その収入によって新たな投資を行い、Web上のあらゆる情報を収集し整理するという目的を、追究し続けるのがグーグルの姿である。

 そのように、今までの常識の範疇に収まらないグーグルであるが、広告収入によって「売上=客数×客単価」の最大化を図っている、という角度で見れば、その戦略はシンプルであることがわかる。

 グーグルが最大化を狙っているのは「客数」である。「客単価」、すなわち検索エンジン連動広告であるアドワーズの単価は、実に微々たる物だ。「ロングテール」という言葉はアマゾンの専売特許のように言われているが、商品の品揃えではなく、広告料金の徴収という面で、グーグルは「ロングテール」を実現している。

 つまり、テレビCMなどには手が出せない中小、零細企業が投じることが可能な単価設定を行い、幅広く広告主の獲得を実現していると言える。まさにこれが「ロングテール」である。

 そして、「客数」は「顧客数×来店頻度」に分解されるが、グーグルは、いずれも爆発的増加を見込んだ戦略を採用していることがわかる。

 まずは顧客数であるが、顧客数とはハード(端末)保有者の増加を意味する。ここで期待されるのは、当然途上国のいわゆる「ボリュームゾーン」。彼らの手にPCが広く行き渡るのは、マイクロソフトのWindowsやOfficeを搭載しては高すぎる。そこで、無料OS「クローム」であり、無料のオフィスソフトの登場、という訳である。

 そして、「来店頻度」を高めるための戦略は、「携帯端末」を普及させること。デスクトップであれば、自ずから端末に向かう時間は限られてくる。携帯端末であれば、外出先での電車待ちから信号待ち、カフェやレストランなど、あらゆる空き時間での閲覧が可能となる。接触時間が増えれば増えるほど、検索回数も、そして連動型広告へのクリック数も増える、という訳である。

 このようにグーグルの戦略を見ていくと、ものの見事に我々(自分も含む)は、グーグルの狙い通りに、「クラウド」に情報をアップロードし、「携帯端末」でその接触回数を増やしていっている。少々悔しい気もするが、興味深くもあるので、しばらくはこの「化け物」企業と深く付き合ってみるとするか。

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2010年4月29日 (木)

アップル、グーグル、マイクロソフト

 アップル、グーグル、そしてマイクロソフトを、企業経営や経営戦略の観点から論じた書籍は数多(あまた)ある。

 本日読んだ書籍『アップル、グーグル、マイクロソフト』は、「クラウド」を切り口として、各社の経営戦略の違いと「携帯端末」を窓口として激化するであろう競争の行方を予想している良書だ。

 著者の岡島裕史氏は、私の1つ年長の1972年生まれとのこと。技術的な分野に対する専門的な知見を持ちつつも、経営的な視点とのバランスも取れており、大変わかりやすく、また興味深く読むことが出来た。

 「クラウド」をめぐる戦い、と言っても、3社のスタンスはまるで違う。「これからは3Dテレビの時代だ!」というと、途端に同質競争におちいってしまう国内家電メーカーの戦いよりも、どう展開するかも予測しづらく、またそれが興味深い。

 第一に、グーグルのスタンスは非常に明確だ。同社は、Web上にある情報をいかに収集し整理するか、それに徹している。そこで彼らが引っ張り込もうとしているのは、全世界のPC端末それぞれのハードディスクに保存されているもろもろのデータだ。これをいかに「クラウド」に吸い上げるかが、同社が一番注力している点である。

 一方、マイクロソフトは、今までの収益基盤である、各端末のOSやソフトウェア、これらの収益を確保しつつ、移転の容易さをメリットとして打ち出しつつ、自社の「クラウド」に囲い込もうとしてる。

 ここで同書が、PC端末は「タンス預金」、クラウドは「銀行への預金」と例えたのは面白かった。なるほど、確かにその通りだ。今まで我々は、「タンス預金」という方法で、いかに自分の家の金庫を頑丈に、かつキャパを大きくするかに注力してきた。しかし銀行に預金すれば、そんな心配は要らない。それがまさに「クラウド」だ、ということだ。

 最後に、アップル社は両者とは趣が違う。iPodの普及とともに、ユーザーが利用するようになった「iTune」。これが自動課金システムとして、結果的に一番上手く言っているマーケットプレイスとなったと、著者は分析している。

 いずれも共通しているのが、「ハードウェア軽視」の思想である。もちろん、デザインはクールに、操作性はストレスなくといった要件は重要となるものの、日本メーカーのようなスペックや品質といったハード面へのこだわりが、いずれの企業にもほとんど見られない。

 この点を序章で指摘しつつ、終章で著者が主張していることは、「クラウドにおいて、大きさは正義」、「一番でなければ生き残れない」ということである(皮肉を込めて、蓮舫議員の「2番ではいけないのですか?」というセリフも引用している)。

 そして残念ながら、クラウドという分野において日本企業は大きく出遅れ、大型データセンターといっても収容するサーバ台数はトッププレーヤーと2桁違うという。

 このような日本の出遅れについて著者は、日本人の「ルール内で頑張る」という頑張り方に原因があると分析している。「ルールという縛りがないと思考がスタートしない」という悪癖を克服し、「ルール策定」に積極的に介入する「ルールブレイカー」たることが、求められるとしている。その代表例が、グーグルであり、アップルであるということだ。

 最後に、これだけ寡占化が進行してしまったクラウドという主戦場で、もはや日本メーカーがイニシアチブをとることは不可能、そうであれば日本人お得意の製品最終処理にこだわり、今後さらに高機能化が予想されるスマートフォンに、「ガラパゴス」と揶揄される携帯電話の製造技術を大いにつぎ込め、という提案を著者は行っている。

 まだまだ始まったばかりの「クラウド」と、そのサービスを受けるための「携帯端末」市場。果たして、日本メーカーは「ガラパゴス化」を強みに転化できるか?その推移を注目しつつ、私自身は「HTC Desire(X06HT)」の到着を楽しみに待つこととしよう。

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2010年4月17日 (土)

『道路整備事業の大罪』

 この本は一週間以上前に読み終わっていたのだが、他の話題での投稿が相次いでいたため、ついつい後回しになっていた。記憶が薄れないうちに、この書籍の紹介と、感想を記しておきたい。

 当初著者が考えていた題名は、「道路をつくると地方は衰える」であった、とのこと。私個人としては、この題名の方がすっきり来る。自分の周りでも、「車社会」の本格到来と、道路開通によってむしろ衰退した事例を、よく見聞きしている。

 例えば、明石大橋開通に伴い近畿圏に人が流出した徳島県、東海北陸道開通によって「宿泊・滞在客」が減少した下呂温泉など。

 麻生政権時代の「高速道路1000円」や、それに輪をかけて実施しようと言う「高速無料化(事実上、頓挫しているが)」、さらにはエコカー減税、まだ噂話の域を超えていないが「自動車教習所無償化」など、昨今の政策は「自動車の使用」を奨励しているように見受けられる。

参考ブログ)エイプリル・フールネタ?『自動車教習所無償化』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-aeca.html

 これは、「消費支出の促進」という観点のみならず、わが国の雇用を支えている自動車産業を下支えしよう、という思惑もあるのだろう。しかし、グローバル競争で揉まれてこそ真に強い産業と言えるのであって、これを国が下支えすることに、たびたび疑問を呈してきた。

参考ブログ)

『自動車産業を支えることは是か?』 2009年4月12日 (日)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-09f8.html

『「Policy to help」でオール一次産業化?』 2009年12月31日 (木)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/policy-to-helpa.html

と、いったことを前提に、本書を読み進めてみた。

 「道路をつくると地方は衰える」の代表例として筆者がまず挙げたのは、「アクアライン」開設に伴う千葉県木更津市の事例。そもそも神奈川県川崎市と千葉県木更津市とをつなぐ「アクアライン」は、一日の交通量を3.3万台と予測していたが、開業直後の1998年は一日あたり1.05万台と予測の3分の1未満、通行料金を25%引き下げた2001年も1.3万台と半分にも満たなかった。

 そして何より問題なのは、「アクアライン」開設後の木更津市の人口は10年間でやや減少(12.3万人から12.2万人)した上、木更津駅前のダイエー、そごう、西友が次々と撤退、地価下落率が3年連続日本一と言う悲惨な状態を招いたという。

 このように、「地方に豊かさをもたらす」ことを期待して、道路を開通させたもかかわらず、道路開通によって地域商業はむしろ衰退したという事例は、枚挙に暇がない。群馬県の南牧村は道路開通によって地元店舗が激減し、「交通手段」、「買い物」に不自由する高齢者が増えているという。

 また、かつては「企業を誘致して若者雇用を創出する」、という名目で道路整備が促進されたが、これが適用できるのは高度経済成長の時代の話。1978年に道央自動車道の苫小牧東インターチェンジが開業したが、同地域で用意した用地面積に対し、95年時点で進出契約を結んだ企業は2割未満、出荷額に至っては当初見込みの3%と未満だという。

 ましてや21世紀の現在に至っては、「道路が整備されていないから、地方の工業団地に企業が進出しないのではない。(中略) 道路が整備されても企業の立地が期待できるのは中国であって、現在の日本ではない。」という厳然たる事実を無視して、「道路整備で企業誘致」を夢見ることはあってはならないだろう。

 著者は本書において、米国のロスアンジェルス、ブラジルの首都ブラジリアなど、「脱・モータリゼーション」に転換している世界各国の都市を紹介している。ロスアンジェルスは、「交通手段は自動車のみ」で都市が発達した結果、渋滞は悪化の一途を辿り、これを打破するために公共交通の導入に力を入れ始めているという。

 ブラジリアは当時の都市計画化が理想と思う要素を盛り込んだ、自動車優先型の都市として建設された結果、歩行者が歩くのはほぼ不可能、ビルからビルへの移動も広大な駐車場を歩いていかなくてはならない、という悲惨な状況に陥っていると言う。

 こうした事例を元に、筆者は道路整備がもたらす負の側面を整理している。

1.自動車への過度の依存体質がもたらす、移動の不自由

 ・・・ 現在の公共交通機関が次々と廃線となっている状況を見れば、明らかだろう。

2.商店の喪失など生活環境の悪化

3.コミュニティの空間的分断と崩壊

4.子どもの遊び空間の喪失

 ・・・ この項で面白い記述があった。千葉県浦安市のママたちは、東京ディズニーランドを子どもの遊び場として利用しているという。その理由でもっとも多かったのは、「自動車の心配をせずに子どもたちを遊ばせることができるから」とのこと。

5.自動車優先型都市構造がもたらす非効率性

 ・・・ 自家用車での移動は、公共バスの3倍、鉄道の5倍以上のエネルギーを要するという。バスや鉄道の乗車率が減れば、エコの観点からも望ましくない。

6.失われる風土と地域アイデンティティ

7.観光拠点だった場所が通過地点になることで生じる観光業の衰退

8.家計への負担増大

 ・・・バカにならない自動車維持費。若者を中心に「クルマ離れ」が進行するのは当然のこと。

といったこと踏まえ、後半の章では「脱・モータリゼーション」に方針転換し、「歩行者中心の街づくり」に成功した国内外の事例をいくつか紹介している。

 著者も指摘しているように、「自動車が豊かさの象徴であった時代」は、少なくとも先進国では過ぎ去りつつある。

 前述したように、若者を中心に「クルマ離れ」が進行するのは不可避のことであり、今さら「モータリゼーション」促進のために手立てを講ずるのは、時代に逆行していることといわざるを得ない。

 本書が指摘しているように、「脱・モータリゼーション」による都市づくり、街づくりを行うことが、「歩行者」、「交通弱者」に優しい地域づくりにつながり、「真の豊かさ」の創出、さらには「地球に優しい」国づくりにつながるのではないだろうか。

 ね、「CO2 25%削減」を掲げた鳩山さん?

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2010年4月16日 (金)

『御社の特許戦略がダメな理由』

 本日4本目の投稿ブログはお奨め書籍の話題。

本日読んだのは、『御社の特許戦略がダメな理由』。

 テーマとしては、『ものつくり敗戦』、『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』と同一線上にある書籍といってよい。出願件数では特許大国と言える日本が、出願件数の割りに、それを企業の業績に結び付けられていない点を著者は問題視し、いかに特許を経営に役立てるかについて、著者自身の多岐にわたる知見を交えて、提案している。

 本書の第一章において、特許範囲を見誤ったばかりに類似品の参入で事業化に失敗したケースや、特許を出したばかりに敵に塩を送る結果となり事業がつぶれたケースなどを紹介し、著者は「攻めの特許戦略だ大利益を生む」、「経営戦略という視点で特許を見ること」の重要性を説く。

 興味深いのは、『ものつくり敗戦』と同様、日本メーカーの根本的な弱点が表れた象徴的存在として、日本軍を引き合いに出していることである。

 詳細は、過去のブログを参照してもらうとして、

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-8ba4.html

 『ものつくり敗戦』においては、日本軍は零戦を筆頭として、当時最先端技術で戦闘機・兵器の製造を実現しえたにもかかわらず、標準化・規格化・システム化の思考に欠けていたがため仕様変更が遅々として進まず、結果として兵器の質や使い勝手において米国に追い抜き追い越された、という点を指摘していた。

 本書においては、主として日本海軍を例に取り、また別の角度で「戦略不在」が敗戦に導いたと分析している。

 軍艦の半分を大西洋に配置する必要がある米国は、いざというときのためにパナマ運河を通る必要があるが、その制約条件がない日本海軍は、46センチ砲を積み込んだ巨大な戦艦を保有することが可能となった(大和・武蔵である)。

 主力戦艦同士の対決となれば、この2つの戦艦を有している日本軍が有利にことを進められる見込みであったが、太平洋戦争は「航空戦」の時代に突入していた。

 ここで注目すべきは、「航空戦」の時代を切り開いたのは日本軍である、ということである。日本軍は、当時の技術の粋を集めて零戦の開発に成功、真珠湾攻撃で華々しい成果を挙げたにもかかわらず、最後まで「大艦巨砲戦略」を捨てきれず、航空戦力を機軸とした戦略変更は行われなかった。

 また、『ものつくり敗戦』でも指摘されたように、零戦は3年間仕様変子が行われなかったのに対し、米国は「大艦巨砲戦略」を捨てて航空戦力の機軸とする戦略に転換、ごく短期間にゼロ戦に勝る戦闘機と多数のパイロットの養成を行い、零戦部隊を凌駕する航空戦力を保持するに至った。

 この事例を「知的財産的」に言えば、日本は大発明をしたものの、特許戦略の軽視によって外国に模倣を許したと、著者は分析してている。

 以上の例から言えることは、ものづくり分野においても、知財分野においても、日本(軍隊、企業)は個別具体的な技術開発には高い成果を残しているものの、「戦略的視点」、「経営的視点」に欠けているがゆえに、上手く業績に結び付けられていない、ということである。

 そして、この欠点は今なおひきずっていると言って差し支えない。例えば、「iPhone対抗馬」と目されるドコモのXperiaは、「ハードにおいて間違いなくiPhoneより優れた部分の方が多い。しかし、サービスまで含んで考えると差は大きい。」と、日本メーカーらしさ満点の製品に仕上がっているようだ(ソニーエリクソンはスウェーデン企業との合弁らしいが)。

【AV Watch】

『Xperiaは「高性能AVスマートフォン」になれるか ~ドコモの「iPhone対抗馬」の実力は?~ 』 

http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/rt/20100416_361513.html

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2010年4月 4日 (日)

「食料自給率」なんてナンセンス?

 本日3本目の投稿、最後は書籍紹介。記憶が新しいうちに書き留めておかないと、あとで苦労するので本日着手する。

 私が好む本のジャンルとして、一般的に当たり前のこととして定着している俗説を疑い、これを事実に基づいて覆す、という類のものがある。

 たとえば、『正しく知る地球温暖化―誤った地球温暖化論に惑わされないために』

参考ブログ) 「エコ」栄えて「国」滅ぶ?-2 2009年9月30日 (水)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/2-bdbb.html

 今回読んだのは、「食料自給率なんてナンセンス!」ということが主要テーマの書籍、『日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率』

 その前に、昨年読んだこの本を紹介しておきたい。『「食糧危機」をあおってはいけない』

 同書では、はじめに世界的に懸念される食糧危機について、楽観的な見通しを述べる。その根拠は、

・中国やインドなどの新興国は、経済成長が続けば先進国同様に人口増加率はゆるやかになる。

・一方で、まだまだこれらの国の単位面積あたりの収穫量は増やせる余地が大いにある。

という両面から、社会科で習ったいわゆる「マルサスの人口論」を否定して見せる。また、欧米の調査期間の予測は、「先進国化とともに食文化も欧風化する」ことを前提としているが、これもナンセンスと断じている。

 日本の食が欧米化したといっても、一人当たりの食肉消費量は米国の3分の一程度。中国は牛肉というよりも豚肉文化であるし、インド人に至っては豚肉も食べない。食文化はおいそれと変わるものではないので、世界中がアメリカ人のように(莫大なエネルギー投入量が求められる)牛肉を食す自体はありえないと言う。

 そして、『日本は世界5位の農業大国~』にもつながってくるのだが、戦後のような「一億総飢餓」に備えた食糧安保体制を整えることは、まったくもってナンセンスであるとしている。

 なぜ、日本人は食糧安全保障を論じるときに、最悪の事態として戦後の「一億総飢餓」を想定するのか?それは、戦中世代の全日本国民が、敗戦による国交断絶と不作とが同時に起こった昭和20年を経験しており、その原体験がいまだに尾を引いていると、筆者は推測している。

 しかし今後日本が、世界を敵に回して全面戦争する事態は起こりえない。また、いわゆる太平洋戦争(大東亜戦争における日米戦)は、ABCDブロックによる「売らない」経済封鎖によって、日本が開戦に追い込まれた。

 しかし今や、小麦一つとってもオーストラリア、カナダ、米国にとって日本は重要な「買い手」である。日本が北朝鮮並みに周りを敵に回さない限り、これらの小麦生産者が日本に「売らない」、という手段を講じることは皆無といって良い。

 と、いったことを前置きに、『日本は世界5位の農業大国 ~』を読んで、「ナルホド」と感じた点をピックアップしてみたい。

・自給率を「カロリーベース」で算出しているのは日本だけ。「自給率40%」と危機をあおるのは、農水省が自分たちの仕事を作り出すための詭弁・方便である。

・金額ベースでは日本は世界第5位の農業大国。金額ベースなら自給率は66%で、先進国の中で何と第3位に位置する。

・カロリーベースだと低くなるのは、自給率の高い野菜や果実のウェイトが低くなる一方、小麦や大豆のウェイトが高くなることに加え、輸入飼料で生産された畜産物が国産扱いから除外されるからである。

・日本人のエンゲル係数は、先進国の中で頭一つ数値が高いが(※残念ながら数値は示されていない)、これは自給率維持のため米価が高く維持されているからである。さらに自給率の向上を図ることは、低所得者の家計を圧迫することにつながる。

・日本の農業政策の一番の問題は、プロフェッショナルである専業農家のみならず、他で生計を立てている兼業農家までも補助対象にしていることである。

・輪をかけてひどいのが、民主党の「戸別補償制度」。これは経済政策でも社会政策でもなく、国民の税金1兆円をドブに捨てる「農業の衰退化計画」である。

・民主党の「戸別補償制度」は、黒字化の努力を否定し、赤字を奨励するようなものだ。日本の農業界を赤字まみれのダメ農家で埋め尽くそうとしている。

 以降、先に述べたような「食料安保」の欺瞞、農家数減少や高齢化は問題ではない、といったように、世の中で常識とされてきた俗説を、次々と否定して見せている。

 最終ページにて、またまた民主党の「戸別補償制度」について厳しい言葉を投げかけている。「民主党は農場の衰退を願っているのだ。農場が弱くなれば弱くなるほど政治の力を必要とし、不安を抱く国民の農政への期待は高まり、一票の換金率は上がるからだ。」と、民主党を批判した上で、

 「自給率という名の呪縛が解けたとき、政治・行政主導による農業の時代に終止符を打つことができる。そして、自律した農業経営者の時代が始まるのだ。」と締めくくっている。

 果たして、それまでに優良農家は残っているのか・・・。鳩山首相がまた思いつきでトンデモ法案を押し進めているようで、気が滅入ってしまうのは私だけではあるまい。

『鳩山首相 戸別補償、コメ以外でも リアル鳩カフェで』

(4月4日19時39分配信 毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100404-00000008-maip-pol

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2010年3月28日 (日)

国内メーカーはEV時代の勝者になれるか?

 のっけから恐縮だが、私は自動車にはほとんど興味はないものの、自動車業界を取り巻く時代のうねりに興味があるので、たびたびこのブログでもトヨタ自動車の話題を取り上げている。

 たまたま最近、EV車の普及を見込んだ事業展開を考えている事業者と関わることがあったので、業界の情報を知るためにも2冊の本を読んでみた。

 一つは『自動車新世紀 勝者の条件』、そしてもう一つは『「エンジンのないクルマ」が変える世界』というもの。

 前者が複数名の日経新聞記者によるオムニバス的な内容なのに対し、後者は力のある経営コンサルタントによる単独執筆のため、より深い未来まで洞察した充実した内容であると感じた。

 以下、同書を読んだ上での今後のEV車をとりまく未来像とは・・・。

・EV車以外のポスト・ガソリン車として、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、さらには水素などの燃料を用いたFCV(燃料電池車)、水素エンジン車、天然ガス車(NGV)、バイオマス由来燃料自動車などがある。

 いずれも、EV車と比較してそれぞれにメリット・デメリットがあるが、昨年に発表された三菱自動車の『i-MiEV(アイ・ミーブ)』 、日産自動車の『リーフ』の登場によって、俄然EV車の存在感が高まっている。

・技術革新の激しいモノづくりの世界において、電池の進歩は遅々としたもの。そんな中、充放電が出来る二次電池としてニッケル水素電池とリチウムイオン電池が約20年前に発売された。

 ニッケル水素電池は第一世代のプリウスに採用されるなど、自動車用大型電池として進歩を遂げ、リチウムイオン電池は主にノートパソコンや携帯電話用として普及した。本書によると、ジーエスユアサなる会社が研究を重ね、自動車向けのリチウムイオン電池を開発したとのこと。

 といったように、ここに来て環境に優しい次世代カーとして、俄然「EV車」への期待が高まってきている訳だが、筆者はEV車の普及に伴い、自動車やリチウムイオン電池製造に関わる日本メーカーが、グローバルな戦略的視点の欠落によって、DRAMや携帯電話同様に、ゆくゆくはアジアメーカーにそのシェアの大半を奪われてしまわないか、懸念をしている。

 たびたびこのブログでも指摘しているように、日本メーカーは製品そのものの品質やスペックにこだわる余り、グローバル市場を視野に入れたマーケティングの戦略的視点の欠落により、サムソンやLG電子などアジア勢に劣勢状態である。

参考ブログ)

『ものづくり敗戦』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-8ba4.html

『『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』-2』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-3593.html

『サムスンに学ぶ』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-910f.html

『日本半導体敗戦』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-d436.html

 同書でも、「携帯電話のガラパゴス現象」という図において、日本メーカーの成長期における経営戦略とマネジメントの問題として、

・機能優先

・過当競争

・標準化の遅れ

・キャリア重視

・資金力の不足

・マーケティング軽視

・グローバルビジネスモデルのなさ

を挙げている。

 最後の章に、日産自動車の志賀俊之COOの発言が掲載されている。志賀COO曰く、

「車中にいる人を助けられる構造を持ったボディを作れるのは自動車メーカーだけ」、

「たとえぶつかってもバッテリーが損傷しないクルマは、自動車メーカーしかつくれません」、

「EVになっても、車は楽しい乗り物、ワクワクするものだ。」と主張した上で、

「何としてでもビジネスモデルとして頑張って、OSとCPUが席巻するパソコンのような世界にはしたくない」、と最後は希望的観測も混じった精神論のような発言で締めくくっている。

 筆者はこの発言を受け、「自動車はクルマづくりの誇り、プロ意識で、新規参入者に十分、競争優位を築ける。それがパソコンの世界と違うところだろう。」と好意的に受け止めている。

 パソコンの世界でアジア勢が勢いを増したときに、「日本のパソコンメーカーにはブランド力、信頼性がある。そうたやすくアジア勢に負けるわけがない。」といった発言が見られた。

 しかし台湾メーカーであるAcer(エイサー)は、今や販売台数で世界No.2まで昇りつめ、日本国内でもAcer、ASUS、Lenovoといったアジアメーカーのブランド力は、着実に国内メーカーと何ら遜色ないものになりつつある。

 国内の自動車メーカー・リチウムイオン電池メーカーは果たして、DRAMや携帯電話、パソコン、液晶テレビや白物家電と同じ道をたどることになるのか?「愚者は経験から学ぶ、賢者は歴史から学ぶ。」という格言があるが、今まさに、自動車メーカー・リチウムイオン電池メーカーの経営陣には、「歴史(正確には、『今そこにある未来』)から学ぶ」姿勢が問われているといっても過言ではない。

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2010年3月20日 (土)

『昭和天皇論』

 本日、日経新聞を見ていたら、小林よしのり氏の最新著作である『昭和天皇論』の広告がデカデカと載っていた。

 その中のキャッチフレーズに、”日本史上最大の巨人”とある。

 私は少なくとも、わが国における”20世紀最大の巨人”であるとは思ってはいたが、なるほど、確かに”日本史上最大の巨人”という表現は、至極適切である。

 歴史に詳しくない人であっても、わが国は(いつからか、とは断定しがたいが)建国以来、昭和20年からの十年弱の占領期を除き、ずっと独立を保っていたことはご存知だろう。

 戦中期の”神国ニッポン”、”神風”といった思想は行き過ぎかもしれないが、アニミズムにも通じる土着的な感性を今も保ち、歴史的な連続性を保持しつつ、なおかつ先進国たりえているわが国を称し、「世界歴史上の奇跡」と表現するのは、決して誇張ではない(われわれ日本人は、日頃意識することはないかもしれないが)。

 そんなわが国が、歴史上唯一、国家存亡の危機に立ったのが、昭和20年。

 過去をさかのぼれば、天智天皇の時代の「白村江(はくすきのえ)の戦い」、鎌倉時代の元寇、戦国時代のスペイン・ポルトガルによる”大航海時代”、黒船来航から明治維新、さらには日露戦争と、外国勢力の脅威に晒された時代はいくつかあった。しかし、これほどまでに国家の存亡が危ぶまれたのは、あとにも先にもこのときだけだ。

 正確に言えば、コロンブスのアメリカ大陸発見(この表現は好きではなのだが)以来、400年にわたって西洋人がアメリカ、アフリカ、そしてアジアと徐々に占領下に置く中、じわじわと日本の外堀が埋められ、そのクライマックスとして日露、日米の衝突があったと言える。

 そのような歴史的経緯を踏まえつつ、国家存亡の危機を乗り越えた時代の国家元首が昭和天皇である。

 立憲君主制という「くにのかたち」を侵すことを強く戒め、過去には二・二六事件が勃発したときのみ指揮権を発動され、そして昭和20年8月、ポツダム宣言受諾で意見が割れる鈴木貫太郎内閣に対し、自らのご意思を表明された昭和天皇。

 自分自身がリアルタイムで目にした(といってもテレビや新聞からだか)昭和天皇は、相撲好きと園遊会の「あっ、そう」くらいだ。多くの30代以上の日本人はそうだろう。ましてや20代以下にとっては歴史上の人物であろう。

 私の知らない昭和天皇、そして「昭和」という時代を、改めて深く噛み締めるためにも、早速本屋に走り、この本を購読してみたい衝動に駆られている。

 

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2009年11月 1日 (日)

『マーケティング』とは『経営』そのものである

 前回紹介したファーストリテイリング(ユニクロ)会長兼社長 柳井正氏の最新著書『成功は一日で捨て去れ』に続き、現役経営者の良書を紹介したい。

参考ブログ)

2009年10月24日 (土) 「ユニクロの強さは『市場の創造』にあり。」

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-e998.html

 今回紹介するのは、日本コカコーラ会長 魚谷雅彦氏の著書『こころを動かすマーケティング』。魚谷氏は、同志社大学卒業後、オーラルケア製品の代表的企業であるライオンにて営業から最年少でプロダクトマネージャーに就任、いくつかの外資系企業を経て、1994年に日本コカコーラ株式会社のマーケティング部門を統括する副社長に就任、2001年には社長に就任し、2006年より現職に至っている。

 同署で多くの誌面を割かれているのは、副社長時代の奮闘ぶり。中でも、日本コカコーラオリジナル製品であるコーヒーの『ジョージア』や『爽健美茶』、『紅茶家伝ロイヤルミルクティ』、『Qoo(クー)』らをヒット商品として育て上げた軌跡について、非常に興味深いエピソードが満載である。

 魚谷氏が日本コカコーラ社に入社した時点での同社のもっとも大きな課題は、缶コーヒーブランド『ジョージア』のてこ入れであった。当時ジョージアは、味では高い評価を受けており、100万台近い同社の自販機の力もあって、シェアは国内No,1であったものの、サントリーの『Boss』にブランド認知度で大きく水をあけられ、シェアもジリジリと低下傾向にあった。

 当時は、まだ米国本社の意向も強く、本社の方針に『缶コーヒー』イコール『ブルーカラー(肉体労働者)の飲み物』という方針でCMが作られていたそうだ。しかし、そもそも日本での主たる顧客は中流の男性サラリーマン。そこで同氏は、すでに進みかけていたCMプランを強引にキャンセルさせ、ターゲットとなるサラリーマンの心に届くCMづくりに着手した。

 当時はバブル崩壊直後、元気を失いかけていたサラリーマンに対して「ちょっと一息つきましょうか」というテーマのもとに、大物タレントT氏とその弟子であるT軍団が出演するCMに決定した。しかし、「さあ撮影」という段階で、T氏がバイクで転倒事故を起こして重症、CMプランは白紙に戻さざるを得なくなるという事態に追い込まれる。

 そんなときに、広告代理店の社長がポツリと放った、「ターゲットの男性の心に響くのは、やはり女性の「お疲れ様」というひとことじゃないでしょうか」、という一言が奇跡を呼び込む。ターゲットは男性=男性タレント起用という常識から逆転の発想で、当時まだまだメジャーの一歩手前だった飯島直子を起用した。彼女起用した「男のやすらぎキャンペーン」が大ヒットし、ジョージアは3年後に国内シェア10%アップを実現したという。

 時代は下って2000年、再びシェアが低下傾向にあったジョージアが復活を遂げる。バブル崩壊からだいぶ時間も経過したこともあり、「一休みしよう」から一歩踏み込んで「明日もあるから、がんばろう」というメッセージが心を打つと同社は分析、その結果作られたのが、「明日があるさ」のテーマに乗って吉本芸人が総出演した、あのCMである。

 このCMは、日本CMの世界での最高賞ACC賞グランプリを受賞したにとどまらず、このCMからドラマや映画が生み出され、さらにはCDも発売、年末には何とNHK紅白歌合戦に出演という一大ムーブメントに発展する。 こうした反響に対して魚谷氏は、「あのCMから元気がもらえた、という声を聞くたびに、僕は本当にいい仕事ができてよかった」、「人に喜んでもらえるのがうれしい。それがマーケターです。」と同書にて述べている。

 新たな需要の創出というと、すぐに我々は「新製品の発売」を思い浮かべてしまうが、このようにすでに今ある商品であっても、ターゲットとなる顧客を徹底的に分析し、彼ら(彼女ら)の心を動かすマーケティング戦略を展開することで、『市場の創造』は可能である、ということを、同書は教えてくれる。

 そのほかにも、同社の基幹商品である超ロングセラー商品『コカコーラ』の強さや、安易なウーロン茶市場への参入を戒めて新たな市場を創出した『爽健美茶』ヒットの裏側など、「マーケティング」に徹底的に取り組んできた同氏の視点から、眼からうろこの記述が満載である。以下、目次から抜粋。

・「商品さえよければ」、「営業力さえあれば」売れるという発想の危険

・誰に一番飲んでほしいかで、ネーミングに入れた一文字

・「平均点」マーケティングは失敗する

・マーケティングとは、「明日」のために行うもの

・マーケティングは、経営そのものである

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2009年9月23日 (水)

世界不況を生き抜く 新・企業戦略

 門倉貴史氏の本は、今までにいくつか読んできたが、『ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る』や、『ホワイトカラーは給料ドロボーか?』といったヒット作があることから、私は彼を「雇用問題の専門家」だと思っていた(蛇足だが、「ワーキングプア」という用語は、この著書から広まったのではないだろうか)。

 そんな彼の最新作、『世界不況を生き抜く 新・企業戦略』は、エコノミストとしての彼の本領発揮された好著である。「雇用問題」からしか語れない城繁幸氏や、的確な現状分析は出来ても具体策となるとサッパリの野口悠紀雄氏に物足りなさを感じていたが、同書は、マクロ経済や産業構造を俯瞰しつつ、ミクロの事象まで目が行き届いており、世界的不況の分析から日本経済の立ち位置、さらには今後日本企業はどう歩めばよいのか、具体的に、それも客観的事実から導き出された根拠ある提案となっている。

※ちなみに、城繁幸氏の限界については、下記の投稿を参考のこと。また、野口悠紀雄氏は、最新作『未曾有の経済危機 克服の処方箋』で、的確に世界と日本を取り巻く経済危機の分析をしているものの、具体策が『自己投資が大切だ!』、『MBAを取得せよ!』と、見事なまでに肩透かしを食らってしまう。

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-e9ec.html

 話は戻って、昨年のリーマンショックによって日本経済は著しく打撃を受けた訳だが、現政権の民主党も含めて、「日本経済がここまでダメージを受けたのは、行き過ぎた外需頼みが原因だ!輸出産業主体の外需頼みから脱却し、内需拡大を推し進めるべし!」と言った意見は多い。

 しかし、門倉氏は同書で、「これから間違いなく日本市場は縮小する。”外需頼み”が悪なのではない!良くないのは”対米偏重”、すなわちアメリカ市場に頼りすぎたことであって、これからも日本は輸出産業を強化して、真の意味でグローバル化を推進せよ!」と主張する。

 同氏は2005年にBRICs経済研究所を設立しているが、こうしたバックグラウンドを活かして、具体的データや客観的事例を的確に交えつつ、「では、今後どの市場を狙うべきか?」、を的確に挙げている。

 同氏は本書の中で、有望な消費マーケットを見極める5つの要素として

1.人口規模は大きいか

2.人口増加は続くか

3.1人辺りGDPが一定レベルに達しているか

4.購買意欲が旺盛な中産階級が台頭しているか

5.新聞・雑誌・テレビなど、メデェイアが広く普及しているか

を挙げ、その代表として例えばアジアなら中国、インド、ベトナム、インドネシアを挙げている。そのほかにも、中東ならトルコ、イラン、アフリカはエジプト、南アフリカ、ナイジェリア、そして南米ではブラジルとアルゼンチンを挙げ、各国の現状と今後についてわかりやすく解説がなされている(ただし、あくまで経済状況と産業が主題であるため、宗教や文化、政治体制や治安などについては、敢えて踏み込んで記述はなされていない)。

 もっとも現時点では、これらの市場規模を合計しても現時点では米国1国の半分に過ぎず、かつ経済基盤も脆いので、長期的には成長しても短期的なリスクは十分ありうる点を、忘れずに言及している。

 そして有望な分野として、「新幹線」で名高い高速鉄道のインフラ受注、太陽電池、水ビジネス、原子力発電、地上デジタル放送を紹介するとともに、家電や自動車分野においては「韓国企業に学べ」と提言している。

 具体的には、韓国企業が成功した「新興国市場を攻める4つの戦略」として、

1.まずはマーケットシェアを確保せよ

2.どの階層を狙うか、ターゲットを絞り込め

3.「プロダクトアウト」ではなく、「マーケットイン」を徹底せよ

4.新製品開発や新分野発見で、新たに市場を創り出せ

を紹介している。2.については著者は、中国市場における資生堂を例に挙げ、「日本企業はアッパーミドルや富裕層、ニューリッチ層への特化すべき」とした上で、パナソニックやダイキン工業のように、あえて韓国企業同様にローワーミドル層で勝負するのもあり、としている。

 後者については、ちょうど先週NHKの「クローズアップ現代」にて、「”ボリュームゾーン”を狙え!」で紹介されたので、ご存知の方も多いだろう。

http://www.nhk-g.co.jp/program/news_documentary/topics/nd_0070.html

 8月15日のブログで、『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』という著書を紹介し、技術偏重から脱しきれない日本の製造業の弱さを指摘したが、シャープやパナソニックなど動きを見ていると、着実にその弱点を克服しつつある、逞しさを感じさせる。

 長らく雇用を下支えしてきた国内製造拠点は、今後も海外移転の動きは止まらないだろう(少なくとも、これから大規模工場が国内につくられる見込みは薄い)。しかし、今後は(米国偏重ではない)輸出産業のさらなるグローバル化によって、日本経済を牽引していってもらいたいものだ。

参考ブログ) 『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか -2』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-3593.html

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