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2009年10月 5日 (月)

「終身雇用は日本の文化」という欺瞞

 ITバブル崩壊や格差社会が問題視されるようになった時期、トヨタの業績が当時は良かったこともあって、「日本的経営」を再評価するという声が再び高まり、そうした中で「終身雇用は日本の文化だ」、「年功序列は日本人の心情にあった、良い制度だ」といった意見が、再び幅を利かせるようになった。

 小渕内閣の首相諮問機関「経済戦略会議」に竹中平蔵らとともに参加するなど、1990年代に構造改革推進の立場から政策決定に大きな影響力を持った中谷巌氏は、こうした世の中の空気を巧みに察知してか、今までの持論を翻して、しらじらしくもこう述べている。「戦後、人々に共同体的な関係を提供したのは「会社」であった。終身雇用や年功序列という制度は人々に安心感を与え、会社への忠誠心を醸成した。」、「成果主義が格差の拡大を正当化し、株主重視の経営が主流になった結果、会社も従業員の精神的よりどころではなくなった。」

『資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言』 (中谷巌 著)

※ちなみに私は、彼の印税収入に貢献などしたくはないので、上記の図書は購入せず、下記の記事から引用している。念のため。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/259176/

 では、「終身雇用」に守られ、「年功序列」の中で生きてきたサラリーマンたちは、「終身雇用」の恩恵に与れない今の若者たちと比べて、会社への忠誠心が高く、慈愛(今流行の友愛?)に満ちた行動をとっているのか?一つの答えがJALにある。

 JALが経営危機に陥っている要因の中で大きなものの一つとして、年金債務がある。この問題を解決するには、支給額を減額するか確定拠出に切り替えるしかなく、それには受給者の2/3以上の同意が必要なのであるが、池田信夫氏のブログによると、JALのOB、9000人の受給者のうちすでに3580人が「年金支給の減額に反対する」署名を行っており、すでに減額は不可能な状況に陥っているという。

2009-10-01 池田信夫 blog 『経済成長というゲームの終わり』

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/7d6a4547b19c2abe298aa7f8b18809b5

 池田氏が指摘するとおり、「企業を卒業したOBには企業に忠誠をつくす理由がないので、徹底的に自分の利益を追求するのだ。」というのは至極もっともな話だ。しかし、仮に彼らが「終身雇用は日本の文化だ」、「終身雇用は日本人の心情に合っている」と主張するとすれば、それはまったくの欺瞞に過ぎない。

 21世紀初頭、同じように経営危機に陥った松下電器(現パナソニック)においては、「創造と破壊」のスローガンーのもと、中村邦夫社長(当時)がOBの猛烈な反対を押し切って企業年金の利率引き下げを断行した。この改革なしに、今のパナソニックの繁栄はありえなかったであろう。

 今後も、終身雇用を維持してきた大企業においては、年金債務が大きくのしかかり、JALや松下同様に、企業年金の引き下げが求められる事態が、大いにありうるだろう。そうした状況の中、果たして「終身雇用」の恩恵に属してきた人々は、「会社に忠誠」を尽くし、後進への思いやりの心をもって、自らの不利益を享受できるだろうか?「終身雇用」制度の真価は、その時に問われると言ってよいだろう。

追記;

 『日本型経営』を賛美する人々は、とかく懐古主義的・情緒的で、その実は信用ならない、ということが言いたかったわけだが、その代表例のような発言が今日あったようだ。

 亀井静香金融・郵政担当相は5日、東京都内で行われた講演会で「小泉改革に便乗して日本型経営を捨てたことが社会をおかしくした。」、「日本で家族間の殺人事件が増えているのは、(大企業が)日本型経営を捨てて、人間を人間として扱わなくなったからだ。」と発言して、経団連の御手洗会長を閉口させたとのこと。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091005-00000108-mai-bus_all 

 ここまでくると、もはやギャグの粋だが、現役の国務大臣がこれでは・・・。

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コメント

>>小泉・竹中改革の中枢的存在だった中谷巌

間違いです。
彼は小渕内閣の頃には竹中さんと一緒に仕事していましたが、それ以降一切政府・行政関係の会議には無関係です。経済誌にもほとんど出ないで消えて、最近復活しただけです。

トラックバックありがとうございます。タイムリーですね。中谷氏の講演はつい先月聞いたばかりです。日本的会社組織という意味で文化の尊重と日教組批判をしていましたが、にもかかわらず民主党に期待していると言うことも言っていたので論理の矛盾を感じてかえってきました。まあ今の勢いを感じて現政権を敵にしたくないという思惑もあったとは思いますが。

日本的会社に関してはグローバル化の流れや人口構成の変異などを無視して終身雇用だけを語っても仕方のない話だと思います。

戦後すぐは外貨不足もあって政策や企業目標として貯蓄の拡大が奨励されましたが、結果的に社会保障の拡大による、財政赤字と国債の利払いなども含めて現役世代の負担の拡大へと繋がり貯蓄どころか実質的な可処分所得の減少にまで陥りました。

高度成長期の世代と、今の現役世代を単純比較しても何ら意味のないことのように思いますし、同様な財政拡大も続けられないわけですから、元に戻せと言っても無理な話ではないでしょうか?

ここでも、終身雇用批判ですか。 
若い人のこの主張は多くの誤解に満ちていますね。
 初めまして。池田ブログでコメントを述べさせていただいているかもと申します。
 1、終身雇用という誤解。
 終身雇用は、終身に亘って雇用を継続するという「契約」ではありません。単に、雇用の環境として決定的要因がなければ、終身に亘って雇用を継続するという社会的慣行です。
 2,年功序列も、終身雇用も、企業の総労務費を増加させない。
 個人の給与は確かに、毎年増加しますが、若年者が毎年入社し、高年齢者が毎年退職していく状況では、企業の支払い労務費は一定です。労務費を増加させる要因は、ベースアップだけです。そのベースアップも、売値の増加に比例して居れば、つまりインフレ要因に対しては、中立です。利益が大きうあがったからと言って、年功給与ぞあげれば労務費は当然にして増大しますが、それは企業の経営責任に於いて行われる、経営判断の問題です。
3,JALは終身雇用制とも、年功序列問題とも全く関係のない問題です。過剰な年金制を設定したのも、過剰な給与体系を構築してしまったのも、経営責任の問題であり、労使が、親方日の丸を食い物にして、野放図な経営を続けてきたことのツケが露呈したのです。
4,同一給与では、生活できない。
 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/d6c14c0300c9bd7b1a46feea258b481d
 こちらに私の主張を書かせていただいています。

★司法による日本の差別的な解雇規制……正社員を守る解雇規制の判例[週刊エコノミスト 2008/07/01]
◆裁判所「正規を解雇するなら、残業を減らせ、配転しろ、パートや派遣を先に首切れ!」
■整理解雇法理
 これは石油ショック後に確立したもの。企業の経済的事情により、正規労働者を解雇する場合、
①人員整理の必要性、②解雇回避努力、③解雇者選定基準、④労使協議――という《整理解雇4要件》を満たすことを求めている。
■司法が雇用形態による差別を奨励
 問題は②で、ここでは「時間外労働の削減」「配置転換による雇用維持」「非正規労働者の雇い止め」の3つが、解雇を回避するためにとるべき努力義務として要求されている。
▼「時間外労働の削減」…『恒常的な時間外労働の存在を、司法が正当化』している面がある。
▼「配置転換による雇用維持」…『家庭責任を負うために配転に応じられない女性労働者への差別を、司法が正当化』している面がある。
▼「非正規労働者の雇い止め」…何よりも非正規労働者の雇い止めを「解雇回避努力」として評価するような法理は、『それ自体が雇用形態による差別を奨励』している。
■EUの常識
 『客観的理由がなく正当な理由なき解雇でも、解雇無効と判断されても、使用者は復職拒否・雇用終了し、金銭補償で解決可能。
 整理解雇は、解雇を前提として労使協議という手続きを要求するにとどまる。
 解雇規制の緩和とは逆に、有期契約の更新規制は厳格で、回数(0~3回)・総期間(約3年)超えると無期へ』
■高裁レベルの東洋酸素事件
 日本の解雇規制の特徴は、『一般の解雇よりも、企業の経済状況に原因する整理解雇をより厳しく規制しようとする』ところにある。
 その象徴ともいうべき《整理解雇4要件》を定式化したのが「東洋酸素事件」。
 そして、これがより規制の少ない有期雇用へ、さらには派遣労働へ、という企業の逃避行動を促し、結果的に正規と非正規の格差を生み出す一つの要因となってきた。
◆『日本をダメにした10の裁判』[新書](日本経済新聞出版社)
 第一章 正社員を守って増える非正社員の皮肉――東洋酸素事件
 その判決に異議あり!  「正社員になれない若者の増加も、企業と政治の癒着も、ムダな公共事業も、産科の崩壊も」……その原因に誤った裁判があった。

司法判断が、正社員の解雇規制判決を出すのは当然のことです。
 何故なら、正社員は、当然にして、長期雇用を暗黙の了解事項として社会的契約が成立しているからです。それを終身雇用制と言います。
 それに引き替え、季節雇用や、アルバイト、パートなどは、本来、長期契約ではないことを前提とし、短期雇用であることを、相互に了解した契約と考えることが出来るからです。
 問題の本質は、本来正社員としての長期雇用形態であるべき雇用を、無理矢理短期契約に押し込めて、正社員にすることを拒否した経営側のルール違反にあります。
 それを法制化したのが、派遣契約制です。
 下請け制でも、下請け企業にあっては、不安定ながら、長期雇用形態を取っていました。それは、下請け会社が、その従業員をそのように扱ってきたからです。
 正社員の解雇規制を撤廃しても、何の問題解決にもなりません。
 解雇規制があるから、企業が倒産するというのは、経営責任としてどう考えてもおかしいですね。
 倒産しないためにする雇用調整は、法で規定などできない固有権そのものだからです。
 法が規制するのは、不当解雇だけです。

 それを恰も、法規制があるから企業が倒産し、海外に逃げ出して空洞化するなどという主張は、為にする恫喝です。
 派遣法を破棄して、正社員化を義務づけ、短期雇用の適用を厳格にすることによって社会に安心感を醸成し、内需拡大を図れば少子化問題、自殺問題などの原理的解決策になります。

>>>小泉・竹中改革の中枢的存在だった中谷巌
>間違いです。
>彼は小渕内閣の頃には竹中さんと一緒に仕事していましたが、それ以降一切政府・行政関係の会議には無関係です。

ご指摘、ありがとうございます。修正しました。

>1、終身雇用という誤解。
>終身雇用は、終身に亘って雇用を継続するという「契約」ではありません。単に、雇用の環境として決定的要因がなければ、終身に亘って雇用を継続するという社会的慣行です。

そうですか。にもかかわらず、今日のコメントでは、裁判所も認めた「社会的契約」??

>2,年功序列も、終身雇用も、企業の総労務費を増加させない。

 毎年、若者の入社と高年齢者が毎年退職が同人数であり続けるなら、成立する話と言うことですね。残念ながら経営は、環境の変化に伴い身を縮めなくてはいけないケースも出てきます。
 さらに、「年功給与ぞあげれば労務費は当然にして増大し」「それは企業の経営責任」といいつつ、4で「同一給与では生活できない」と、年功制を肯定??

3.JALは、「”労使”が、親方日の丸を食い物にした」と記述しつつ、「経営責任=使用者側人責任なし」??

 そもそも、池田ブログにあるように、親方日の丸でない日立やパナソニック、ホンダらが年金債務に苦しむ?
 多少の差はあれども、新卒採用主義、終身雇用を重視し続けて、企業に一生を捧げるよう仕向けてきた大手企業が抱えている共通の問題であることから、終身雇用・年功序列と密接に関わった問題と考えるべきでしょう。

>派遣法を破棄して、正社員化を義務づけ、短期雇用の適用を厳格にすることによって社会に安心感を醸成し、内需拡大を図れば少子化問題、自殺問題などの原理的解決策になります。

 まさに、労組の主張そのものですね。さすがにここまでストレートに表現はしませんが。いずれにしても、議論の相手は池田ブログの方にたくさんおられますので、そこで大いにやってください。

あ、長居をしてしまい失礼しました。
 いやね、現場で様様な問題に対処しておられる現役の方にご意見をお聞きしたいと書き込んだのですが。
 賃下げをしなければ経営を守れないというのでは、議論の余地はありませんね。
 年功序列、終身雇用というシステムを理解できない世代がこれほどに増えてしまったと言うことが、此の国にとって不幸です。
 そのシステムを否定したとき、先ず、技術力が崩壊します。そして物作りが崩壊します。
 サービス業や、資本収支で一国の経済をまかなえると考えるのも、肥大した経済学の幻影でしょうか。
 或いは、富める強者と、貧しい多数に分化した社会がもたらす騒乱は、歴史が示しています。
 何れにしても、此の国は、貧しい小さな国になっていくのでしょうね。
 若い人たちがそれで良いというのなら、止めようもありません。
 有り難うございました。

年功序列、終身雇用の害が一番大きいのは公務員です。とくに名古屋市では大量採用した団塊世代の退職金を払うと市財政が終わってしまいます。
河村たかし市長は厳しい市財政を背景に、その対策として300人以上の職員削減を策定しましたが、その方法は“新規採用数を抑える”事です。岐阜市も苦しい市財政を改善する為に向こう3年間の新規採用を抑制する方針です。結局、年功序列と終身雇用の犠牲になるのは若者たちなのですよ。
今の年功序列と終身雇用制度は若者の犠牲によって成り立っているのです。

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» 亀井も気が狂っていますね・・・・・・ [夜ととぐをと空の風景]
こんなパフォーマンスでつられる国民がいることにも驚きですが、ほとんどいわれのない誹謗中傷と言っても良いのではないでしょうか? そもそも日本型経営と家族間殺人との因果関係に科学的根拠と関連性を示すデータで持たしてのことでしょうか?さらに日本型経営を続けていけなくなったのか、それとも単純に捨て去ったかの検証もありません。小泉改革なんてここ数年のことですが、日本型経営の縮小はそれ以前から続いていますが、その関連性は? 言いたいことは山ほどありますが、日本の政治はどんどんレッテル張りだけにな..... [続きを読む]

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