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2009年8月17日 (月)

電気自動車への移行はスンナリ進むか?

 先日のブログで紹介した書籍『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』によると、

 「ハイブリッドは「従来モデルの延命策」である。しかし「延命策は、実は短命に終わる。なぜなら、「ハイブリッドカーの性能が上がる、ということはそれだけ電気自動車の実現を引き寄せることになるからである」と予測するとともに、

 「ガソリン自動車から電気自動車に移行することによって、自動車は摺りあわせが強みとして生きる「インテグラル型製品」から、パソコンのように組み立てが簡単な「モジュラー製品」になってしまう。ゆえに日本の自動車産業は、あと15年で壊滅状態となる。」と予測、

 もはや、「従来の日本の大企業が得意としてきた「垂直統合型、自前主義、企業群の切磋琢磨」モデルは、通用しない。しかし未だに日本企業は、従来のイノベーションモデルでいくさを仕掛けようとしている。」ことに警鐘を鳴らしている。

 このブログに対してコメントを頂戴した。

 「電気自動車については、10年や20年で普及するとはどうしても思えません。私は東京23区内でマンション住まいで自家用車を所有していますが、マンションの駐車場の場合はまずコンセントがないし、コンセントを設置して各使用者に紐付きで請求できる設備を導入して請求を行い、同時に管理組合の規定も整備する、ということを考えただけで頭が痛くなります(紐付けにしなければ、各区分所有者間の負担の不公平が生じて必ずもめる)。自走式ならまだしも、最近のマンションに多い機械式の駐車場では、充電設備の設置自体が絶望的ですね。

 (中略)また、首都圏や、地方都市でも地下鉄網が整備されているような大都市都心部では、通勤に車を使用しない週末ドライバーがほとんどだと思いますが、この場合、バッテリーの自然放電によるロスがバカにならないくらい大きいと思います。逆に、長距離ドライブが多く毎日使用するような地方では、フル充電で航続距離200kmや300kmぐらいの電気自動車では(常にフル充電していることは非現実的なので)普及が難しいでしょう。」との意見だ。

 今週の日経ビジネスにおいても、電気自動車の本体の開発は着々と進んでいるものの、「充電インフラ整備」がネックとなって、普及は妨げられるのでは、との懸念を示している。同誌によると、「現時点では、積極的に急速充電器を設置しようという動きは見当たらない。普及に当たっては3つの課題がある」とし、具体的に以下の3点を述べている。

1.導入コストが高い。今のところ充電器を1基設置するのに800万円以上の初期投資が必要。

2.充電ビジネスそのものの事業性が低く、ガソリンスタンドのような採算の合うビジネスになりえない。

3.先行して使用している大手企業は使用用途が限られ、急速充電器の必要性を余り感じていない。

 三菱地所では現在2箇所の急速充電器を置いているものの、「企業が使う電気自動車は、夜間に充電ができればいいケースがほとんどなので、法人向けビルはコンセントで十分。」とのことだ。

 同誌によると、「コンビニエンスストアでは設置に必要な高圧電源が店舗にないケースがほとんど」とのことで、ガソリンスタンドのようにあちこちに、という訳には行かなさそうだ。もっとも、「電気自動車、ローソンで充電」、「電気自動車は本年度中に40台導入する計画で、東京や名古屋、大阪の一部地区で、店舗経営指導員が店舗の巡回時に利用する。充電施設は200ボルトコンセントタイプの充電器で、7店舗に設置。順次増やし計25店舗に置く計画。」なんて記事もあるので、コンビニが急速充電のステーションの主役となりうる可能性は大いにあり、と考えられるのだが(ちなみに、ガソリンスタンドとコンビニは、いずれも約4万ヶ所ある)。

http://www.chunichi.co.jp/article/car/news/CK2009080402000208.html

さらに、「将来、電気自動車や電池の性能向上で航続距離が伸びたり、コンセントでの充電が大幅に短縮する技術が開発されたりすれば、急速充電器の必要性が薄れる」とし、その懸念から経済産業省も安易には補助金をつけて設置、というには及び腰の様子。

 となると、「電気自動車や電池の性能向上で航続距離が伸びたり、コンセントでの充電が大幅に短縮する技術が開発」された頃には、本格的な普及があり得るということだろうか。冒頭の「ハイブリッドカーの性能が上がる、ということはそれだけ電気自動車の実現を引き寄せることになるからである」という推測が正しければ、その実現は意外と早くなるかも知れない。

 以上、前置き。ここからが本論。

 気が早い話だが、電気自動車の本格普及が始まると、スンナリとガソリン自動車から電気自動車に移行が進むだろうか?私は、「アナログ放送からデジタル放送への移行」以上に、社会的な混乱が起こると、今から懸念している。

 環境省は14日、「省エネ技術の開発・普及を急ぐことで2050年までに日本の温室効果ガス排出量を05年比で80%削減できる」と分析する中で、自動車のあるべき姿として「電気自動車100%」もしくは「電気自動車50%、ハイブリッド車50%」と設定している。ガソリン使用料が減れば、環境には良いだろが、3兆円強あると言われているガソリン税(揮発油税2兆8395億円+地方揮発油税)の税収も、グンと減ることとなる。エコを絶対化して、経済がどれほどの影響を受けるのか、ここで考慮されているとは言い難い。

2050年までに温室ガス80%削減可能…環境省

8月14日22時52分配信 読売新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090814-00001017-yom-soci

 電気自動車が普及するということは、それだけガソリン自動車の利用者が減る、ということだ。そうなると、全国各所にあるガソリンスタンドは次々と損益分岐点を割り込み、閉鎖に追い込まれる可能性が高い。そうなると、ガソリン自動車がかなりの割合が残っている段階で、社会インフラとしてのガソリンスタンドが必要十分な数を割り込でんでしまうのではないか。

 かつて、ガス欠寸前で、ガソリンスタンドを探したときは冷や汗ものだったが、今後は「行けども行けどもガソリンスタンドはなく、あえなくガス欠」、なんて自動車が続出するのではないだろうか。もっとも、特に地方は人口減によってガソリンスタンドの経営が成り立たなくなり、至るところで閉鎖に追い込まれているが、電気自動車の普及は、それに追い討ちをかけることになるだろう。 

 2011年には、デジタル放送終了で、デジタルチューナー付きTVに買い換えられない人たち、すなわち「地デジ難民」が続出すると言われている。自動車は、テレビよりもはるかに高額だ。20年後くらいには、生活の基本インフラとしてのガソリン車が使い物にならなくなる、「ガソリン車難民」が続出するのでは、といった懸念を今からしている(気が早すぎ?)。

 今後も電気自動車の普及について、問題意識を持って注視していきたい。

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コメント

電気自動車の普及の妨げとしては、
1.バッテリー価格、
2.充電時間が長い(満充電に10時間程度はかかる。といって急速充電はバッテリーの劣化を加速する。)
が最大の普及の妨げです。もし電気自動車が優れた商品と市場に認められれば、充電スタンドはガソリンスタンドよりも安価に建設可能です。
 バッテリー価格は現在、概算で15万円/kwh程度であり、三菱自動車のアイミーブは16kwhを搭載、日産のリーフは24kwhを搭載します。それぞれの概算のバッテリー価格は三菱が240万円、日産が360万円となります。高いですね。ちなみに三菱は車両価格が459.9万円です。富士重工のステラは9kwhを搭載し車両価格は472.5万円、日産の車体価格はまだ不明です。
 いずれにせよバッテリーは非常に高価であり、将来的に2050年ぐらいまで考えても3~5万円/kwhまで下げることは至難の業というのが電池業界の見方です。
 また、電費(km/kwh)は三菱の発表では10km/kwh程度、つまり航続距離は160km程度にすぎません。ちなみに三菱は軽自動車クラス。日産はコンパクトカークラスなので24kwhで160km程度の航続距離となります。いずれも近距離移動専門のクルマということになります。

 これらから分かることは、ガソリン自動車のように売り切るというビジネスは、あまりにもバッテリーが高価であるために非常に難しいということです。そこで日産はバッテリーをリースにして、それ以外の部分を販売することで顧客にランニングコストメリットを生み出そうとしています。
 充電時間問題について日産は充電ステーション以外に、(地域によって)バッテリー交換ステーションによって問題解決しようと考えているようであり、ベタープレース社との協働を考えています。
http://japan.betterplace.com/opportunity/
 しかし、日産のバッテリーのリースにも前提がある筈です。充電済みの電池をステーションに在庫として持つという負担は前記したバッテリー価格からすれば大変な負担となります。もしリース事業が可能となるならば、リース終了時に残価格が低下した場合に売却(売り切り)ができる必要があります。このバッテリーの行き先が、今般騒がれているスマートグリッドなのです。自動車で使い済みの電池を家庭あるいは社会全体に配置し、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー(出力不安定電源)のバッファー)として使われるという絵が描かれているのです。
 スマートグリッド(IT技術を使い、電力の需要側をモニタリング、また再生可能エネルギーのような不安定電源を電力ネットワークに安定的に乗せることで電力需給を効率化する。)を取り巻く業界(ITと重電の一部)は電気自動車の普及を前提に祭りをしているような状態となっています。

 スマートグリッドも電気自動車も昨今のCO2削減の動きに敵うので、その将来性は疑問視されにくく、技術のバブルともいうべき状況が生まれていると私は思っています。

 航続距離が短く、バッテリー交換をするというスタイルのクルマが市場で大規模に受け入れられるかというと、これは非常に限定的であると言わざるを得ません。
 電気代がガソリン代より安いということで、例えばランニングコストの大きいタクシー業界が電気自動車を肯定的に受け入れるかというとその限りでは無いでしょう。やはり一回充電当たりの航続距離が短ければ、都心から近隣都市への長距離移動などはできません。短距離専門のタクシーとならざるを得ません。

 電気自動車は、バッテリー価格の低減、性能向上に関しては、将来に渡って不透明どころか非常に厳しい(半ば絶望視されている)というのが電池業界の見方であり、その電池の普及を前提にIT業界はスマートグリッド(の重要な部分)の将来性を語っているというのが実情です。

 電気自動車の市場普及に対して有効なドライビングフォースはエネルギー安全保障と環境対策と思われます。イスラエルやアメリカは石油の輸入依存度を減らしたいということでしょう。また、CO2排出削減費用が極端に高くなれば、電気自動車の普及を後押しするでしょう。しかし、それほどCO2削減に対する要求が強い(排出権価格が高い)ことになるのかは分かりません。また、本気でCO2を下げるとなったら、アメリカや中国のように発電量の半分もしくはそれ以上を石炭から作っているようでは意味がありません。アメリカが如何にオバマ政権下で方針転換したと言っても発電量の4割程度は、30年後でも石炭でしょう。エネルギー安全保障上はその方がよいからです。

コメントにご返答いただき、ありがとうございます。
仰るとおり、「電気自動車や電池の性能向上で航続距離が伸びたり、コンセントでの充電が大幅に短縮する技術が開発」されれば、本格的な普及があり得るでしょうね。ただ、それは今後の技術開発の加速を見込んでも、10年やそこらでは難しいと思います。
また、都内のコンビニは駐車場がないところがほとんどなので、急速充電のステーションにはならないでしょう。ガソリンスタンドも、充電に20分ぐらい掛かるようだと、長蛇の列ができてしまうでしょうね。いずれにしろ週末ドライバーだと次の週末までは駐車場に放置されることになるので、よほどバッテリーが大容量にならない限り、家庭で充電できないとロスが激しくて、厳しいです。
ガソリンスタンドというインフラにダメージを与えると言う着眼は卓見と思います。完全なEVの普及と行かなくても、HVやPHVが当たり前になってリッター50kmの燃費が珍しくなくなった場合、ガソリンの消費量が現在の半分以下になるわけですから、地方や郊外のガソリンスタンドの経営は厳しくなるでしょうね。これは今後、かなり早い時期・・・10年以内に出てくる問題と感じます。

漸進的に進むと言うシナリオも考えられると思います。例えばプラグインハイブリッド車(PHEV)の存在です。100V家庭用電源では費用が高すぎるという考え方もありますが、エネファームなど燃料電池と併用するというのはどうでしょうか。原発が見直され深夜料金が安くなれば可能性はさらに増えます。

そもそもガソリン主体のエネルギー供給から電気供給へ一気に変わるとはなかなか思えません。その過渡期の主役がPHEVだとしてもアリだなと思います。

もちろんえんさんの言うとおりガソリンの使用量が減ればGSは少なくなり、ガスの価格は上がるかもしれません、そうなればなおさら漸進的にPHEVの普及は促されるでしょう。

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