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2009年8月16日 (日)

家電メーカーで「地産地消」が進む?!

 農産物等の「地産地消」、すなわち「その地域でその地域で作られた農産物・水産物を、その地域で消費すること。」は、地域経済活性化や地域の食材・食文化への理解促進(食育)につながるのみならず、輸送費用を抑え、フードマイレージ削減による環境問題への対処と言う観点からも推奨され、その機運が高まりつつある。

 その「地産地消」が家電メーカーでも進みつつある。といっても、これは日本人にとってありがたい話ではない。むしろ大変痛みの伴う話である。従来でも、電機の世界で使われていた言葉には「消費地生産」があるが、4月8日の「新経営戦略」発表においてシャープの片山幹雄社長は、同社のビジネスモデルの転換の決意をしめすため、あえて「地産地消」という言葉を用いた。

 『AV Watch 大河原克行のデジタル家電 -最前線- 』によると、シャープが挑むビジネスモデルの変革とは、”「地産地消」、「従来の垂直統合モデルからの脱却」、そして、「プラントを利用したエンジニアリング事業」”という言葉で示されるもの、と集約している。

『AV Watch 大河原克行のデジタル家電 -最前線- 』

シャープが「地産地消」の新ビジネスモデルで目指すもの

~21世紀コンビナートは、片山社長の幼少時代からの憧れ?

http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/ce/20090413_125288.html

 このような経営戦略を受けて、日本、特に中部地方の人間にはショッキングなニュースも発表された。そう、シャープ亀山工場の閉鎖だ。5月14日付毎日新聞によると、

 「シャープは、テレビ向け液晶パネルの亀山第2工場(三重県亀山市)の生産設備を、将来的に海外に移設する方針を明らかにした。これまで「亀山モデル」として国内生産にこだわってきたが、既に同第1工場の生産設備も中国へ移す方針を明らかにしており、国内生産は10月稼働の堺工場(堺市)に最終的に集約し、最新鋭モデルを生産する。 片山社長は「日本市場は人口が減っており、工場は堺に一つあれば十分」と語った。」、とのこと。

 日本国内、とりわけ中部地域においてシャープ製液晶テレビのブランド力向上に大きく寄与した”亀山ブランド”を敢えて捨ててまでも、ビジネスモデルの変換を成し遂げる、片山幹雄社長の強い意欲がここから読み取れる。

 さらに本日の日経新聞によると、パナソニックも「設計や製造などすべて現地化する新興国向け白物家電の「地産地消」プロジェクトを準備中」とのことである。同誌によると、「中間所得層をターゲットに低価格製品を大量販売する戦略で、4月~6月の販売急増によって足場を築いた新しい市場で、一気にシェアの拡大を狙う。」とのことである。

 これら大手の戦略転換は、まさに昨日のブログで紹介したような、”従来のイノベーションモデルでいくさを仕掛けようとしている「垂直統合型、自前主義、企業群の切磋琢磨」モデル”を捨て去る試みであり、”画期的な発明を基に画期的な製品を作り市場に導入し、しばらくは100%近いシェアを誇るものの、ビジネスの垂直分離がなされると同時に国際斜形分業が加速、商品の爆発的普及が始まるころからNIEs/BRICs諸国に追いつかれ、シェアを落としていく”、という日本メーカーの惨敗パターンからの脱却を図る試みであると言ってよい。

参考)

2009年8月15日 (土) 『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』-2

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-3593.html

 確かに、国内の大手メーカーの工場閉鎖・海外移転は、そこに働く従業員のみならず、その地域経済にとっても甚大な影響を及ぼすため、「海外に移転せず、いつまでも国内あって欲しい」という思いは十分に理解できる。しかし、企業がグローバル競争で勝ち抜くためには、もはや国内での「垂直統合型、自前主義、企業群の切磋琢磨」モデルは通用しないのである。

 このように、産業構造の転換が不可避である中で国内の雇用を維持・拡大していくためには「外需主導を脱却して内需を拡大する必要がある」わけだが、池田信夫氏は、内需拡大に関する民主党の”修正”マニフェストに疑問を呈している。

 民主党の”修正”マニフェストは、「子ども手当、高校無償化、高速道路無料化、暫定税率廃止などの政策により、家計の可処分所得を増やし、消費を拡大します。それによって日本の経済を内需主導型へ転換し、安定した経済成長を実現します。」と書いているが、池田信夫氏はこれは「誤り」と断定している。

 すなわち、「このような「内需」の財源はすべて税か国債であり、所得再分配にすぎない。たとえば子供手当をもらう家庭の可処分所得の増加は、配偶者控除や扶養控除を減らされる子供のない家庭の可処分所得の減少で相殺されるので、ネットの消費は増えない。」のである。

 では、内需拡大を実現するにはどうすれば良いのか?池田信夫氏は次のように述べている。

 「成長戦略とは、みんなの党だけが正しく認識しているように、「生産要素を成長分野に再配分」することによって経済の効率を高めることだ。これはゼロサムの所得分配とはまったく別の問題であり、民主党のマニフェストはこの基本的な考え方を理解していない。税金のバラマキによる「内需拡大」がいかに悲惨な結果をもたらすか、われわれは90年代に学んだはずだ。」

池田信夫 blog 2009-08-12 『「内需拡大」についての誤解』

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/689e7b00744b7db598a910ae37d1d2cf

 「生産要素を成長分野に再配分」というマクロ的な目的をどのように実現するのか?政府がなすべきこととしては、例えば医療ベンチャーの早期事業化を実現するために、文部科学省・厚生労働省・経済産業省の縦割り行政を克服することや、城繁幸氏が主張しているように「正社員の丸抱えによる終身雇用制度・年功序列制度」を廃止して雇用の流動化を進める、といったことが挙げられるだろう。

 池田氏のブログにおいても、Economist誌の「日本の過大な経常黒字=過少消費が世界経済と日本自身にとって有害だと論じ、規制撤廃によってサービス業の労働生産性を上げて内需を拡大すべきだ」との提言を紹介している。以下、転載。

 「今後10年で人口が9%も減少する経済においてもっとも緊急性の高い問題は、「子作り」を奨励することではなく労働生産性を上げることだ。そのためにはリストラによって労働移動を促進するしかない。それは古い企業で雇用喪失をまねくだろうが、サービス業の効率を上げて消費が増えれば、最終的には雇用は増える。重要なのは、「安心・安全」などの理由で過剰に規制されているサービス業を政府の介入から解放し、新規参入を促進することだ。」

 そして我々一人ひとりは、長らく雇用を支えてきた大手メーカーの国内製造拠点が「地産地消」によって海外移転するという流れが不可避であるという現実を、大手メーカーのみならず中小企業、サラリーマン、さらには派遣社員からフリーター、ニートに至るまで、現実として強く認識することが、まずは第一歩となることは間違いない。

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