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2009年7月27日 (月)

『トヨタ土壇場』

 先週の週刊東洋経済の特集は『トヨタ土壇場』。内容を見ると、このブログで指摘したことと、ほぼ一致している。週刊東洋経済の記者は、このブログを見て記事を書いたか??

 冗談はともかく、『プリウスが、新車販売ランキングで国内一位!』とマスコミがオメデタイニュースを報じる裏で、6月のトヨタの新車販売台数は前年比10.8%減。数字を見る限りでは、プリウス特需は、新たな需要を開拓したというよりも、既存モデルを喰って作り上げられた数字に過ぎないようだ。

 こうした状況の中、豊田章男社長は「政府のエコカー減税や助成金にお礼を申し上げ、この流れが続くようにお願いしたい。」と、国による支援を引き続き期待する始末。雇用の下支えをして景気の底割れを防ぎたい政府の思惑もあり、”プリウス特需”が人為的に作られれている訳だが、特定産業を補助し続けることが長期的に見て疑問符が付くのは、4月12日に指摘した通りだ。

2009年4月12日 (日)

自動車産業を支えることは是か?

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-09f8.html

 さらには、国内のプリウス特需ではとてもカバーしきれない、米国市場の収縮。記事によると、米州(カナダ、米国、メキシコ)におけるトヨタの稼働率はなんと41%。今までの拡大路線がここに来て裏目に出て、世界で300万台もの膨大な過剰能力を有しているという。

 このように、かつて経験したことのない苦境に対して、豊田章男新社長は6月25日に行われた就任後初の記者会見において、「『トヨタ丸』は嵐の中の海図なき航海に出ました。」とコメント。これに対して同誌は、「難局を前に思考停止!? 戸惑うリストラ処女」と、危機を乗り切る戦略が描けていないことを、強烈に皮肉っている。

 これに関しては、5月10日のブログにて、「そもそもトヨタは、自分のコントロール下にある「カイゼン」には滅法強いが、コントロール下にない不確実な未来に対して、決して鋭い洞察力を働かせることを得意としているとは言い難い。」と指摘している。

2009年5月10日 (日)

トヨタの経営力って一流?

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-9b47.html

 このような事態になっても、北米担当の新美篤志副社長は、「2~3年のうちに需要は回復するだろう。工場閉鎖は考えていない。」と、楽観的なコメントを表明している。そもそも昨年までの北米におけるトヨタの好調は、「サブプライム層への自動車ローンの組成という”バブル”によってつくりあげられたもの」という認識が、ここまで不十分な人間がいまだに北米のトップに居る、という人選には首をひねらざるを得ない。

 さらに、次なる市場として期待が高い中国やインドだが、トヨタのシェアは中国では6%、インドでは2~3%と出遅れている上、これらの市場で量が期待できるのはは採算性の低い小型車と見られている。インドではタタ・モーターズが発売した”ナノ”は、日本円で何と21万円という。

 ここで思い出されるのが、ノートPC業界における「ネットブック」の存在だ。東洋経済においても、軽くて安い「ネットブック」市場を台湾勢が創出し、国内勢はその勢いを見て追随していることを指摘するとともに、ハーバード大学のクリステンセン教授が理論化した「イノベーションのジレンマ」に言及している。

 すなわち、優れた特色や技術を持つ巨大企業がその特色や技術を改良することにのみ注力しすぎ、従来品の価値を破壊する新興勢力に市場を奪われる、という構図がパソコン市場にすでにおきており、自動車業界にも訪れつつある、ということである。これについては、6月22日のブログにおいて、「「非連続の時代」とトヨタ」という題名で言及したこととほぼ一致している。また、3月31日のブログにおいても、これと相通じることを書いていた。

2009年6月22日 (月)

「非連続の時代」とトヨタ

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-06e3.html

2009年3月31日 (火)

続 新たな需要は「カイゼン」ではなく「革新」から生まれる。

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-7782.html

 さらに、ネットブック市場における台湾勢の革新性と、従来価値観を引きずる国内メーカーの対応については、半年以上前に、かなり集中的に書いていた。

2008年9月11日 (木)

戦略とは「やらないこと」を決めること

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2008/09/post-6d3f.html

2008年10月16日 (木)

中途半端やなぁ~

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-a720.html

2008年12月14日 (日)

デザインの威力とブランド力過信の危険性

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-c647.html

 いずれにしても、今までは”北米バブル”、そして今の”エコ・プチバブル”によってトヨタが栄え、その恩恵を日本経済が幅広く享受してきたのは間違いない。しかしこれからは、トヨタ自身がカイゼンから(リストラも含む)革新に大きく舵を切らなければ、苦境は続くことを覚悟しなくてはならない。それとともに我々も、過度なトヨタ依存から脱却し、新たな需要開拓・産業創出に取り組まねば、明るい未来はやってこないということを、まずは強く認識する必要があるだろう。

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