転職は自主的な「人事異動」だ!
ついに米国ビッグ3の一角、クライスラーが破産法を申請した。同社と日本メーカーとの取引はごくわずかで影響は限定的、とのことだが、これがGMとなったら対岸の火事という訳にはいかないだろう。リーマンショック以上の大波が、世界中に押し寄せることを覚悟しなくてはならない。
度々ブログでも書いているように、こうした不透明感が増すにつれて、日本の若者(とその親?)は、ますます安心・安全志向に陥り、大手志向・公務員が高まりつつある。社会経済生産性本部が新社会人に対して毎年行っている調査によると、「今の会社に一生勤めたい」とする回答は4年連続で上昇、2008年には過去最高を記録したという。
しかし、安全志向の人間が集まれば集まるほど、その組織は硬直的になり環境変化に適応できず、業績は傾いていく。そして、その組織にぶら下がっていた人間ほど、会社から放り出される可能性は高くなり、次の職にありつけず途方にくれるリスクは、今後ますます高まるだろう。
そのような意味合いにおいて、勝間和代氏の『会社に人生を預けるな』に、私は大いに賛同し、「終身雇用にもよいところがある!」、「終身雇用は日本の文化だ!」と声高に唱えるものに、違和感を覚えているのは、度々述べてきたとおりだ。
個人的には、大学卒業後の12年間で3回の退職届を出したが、これは社会と自分との関係の最適化を図るための、自主的な「人事異動」であると考えている。一般的に人事異動は会社・組織の命令によってなされる訳だが、これはあくまでその社内、組織内の異動に過ぎない。自分と社会との係り合いにおいて、その会社・組織にいる必然性が薄れ、より自分を必要としているステージが他にあるとの判断がつけば、自ら「人事異動」を発令するという選択肢は、(リスクは伴うものの)大いに推奨すべきである、と個人的には考えている。
自分の場合、「成功」という結論を出すには、いささか早すぎる年齢ではあるが、少なくとも一つの会社にいただけでは、とても出会うことが出来ないような様々な業界・世代の人たちと出会うことができ、仕事で揉まれ経験を積む中で、成長につながる多くのことを得ることが出来た、と実感している。
そしてその出発点として、そこそこ規模が大きく、人材育成の土台があった企業で社会人の基礎や社会の仕組みを学ぶことが出来たのは、非常にありがたかったと感じている。ゆえに、社会学者の山田昌弘教授の主張とは反対に、「まずは大企業に就職し、そこで基礎を学んだ者が、どんどん会社を飛び出していくことが日本社会全体にとって好ましいのではないか」、とのブログ記事を以前書いた訳である。
参考ブログ)『大企業は人材輩出業たれ!』
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-1d37.html
しかし、世間は依然として終身雇用を基本的に肯定し、それが望ましい社会のあり方であることを前提として、政策やニュースの論調が推し進められている感は否めない。池田信夫教授が指摘しているように、「終身雇用と呼べるような実態は従業員1000人以上の大企業の男性社員に限られており、その労働人口に占める比率は8.8%にすぎない。」にもかかわらず。
参考ブログ) 池田信夫 blog「終身雇用という幻想を捨てよ」http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/bd13735ee5e9dfbda0f5855a522a8016
これは、経済界の中枢や日経新聞や経済誌を始めとしたマスコミ、政治家・官僚などが、(公務員は含まれてはいないが)労働人口の8.8%に過ぎない終身雇用の世界に生きており、自分たちの世界の話が、日本の企業全体の共通した話であるように勘違いしていることに、原因があるのではないか。
そしてその勘違いが迷惑なことに、マスコミ報道や政策の基本思想に組み入れられてしまい、終身雇用とは関係のない世界の人たちまで、あたかも「日本社会は終身雇用である」と信じ込んでしまっているとすれば、迷惑な話だ。「終身雇用があるべき姿である」、とされるがゆえに企業は雇用維持を求められ、既得権益は保持され、そのしわ寄せが弱者に行くこととなる。
「なぜ若者は3年で辞めるのか」の著者である城繁幸氏も、「内定取り消しだけを規制するというのは対症療法」に過ぎず、「根本的な原因療法としては、流動化を進めて年齢給を無くし、内定者だけが切られることのないようにする」べきである、述べている。
城繁幸氏ブログ 『内定取り消し問題の本質』
http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/d60214e968230bc98dc9634e15cb66a1
公表というペナルティが科せられることで、今後「内定取り消し」そのものは減るかもしれないが、そうでなくとも採用人数の絞込みまたは新卒採用ストップという手法で、今期の新卒者が厳しい状況に立たされるのは間違いない。現在、例年になく学生が内定確保に苦戦しているのは、これは採用枠が狭まったことに加え、企業をとりまくマクロ環境がどう転ぶか分からず、今の段階で内定を出して取り消し、という事態を何としてでも防ぎたい、という姿勢の現れであろう。
また、派遣社員・請負社員を含めた非正規雇用者は、いったん非正規雇用に転じたら正規雇用者の這い上がるのが困難である、という状況も相変わらずで、その原因の一つに正社員(特に中高年層)が既得権益化し過ぎているというのは、異論のないところであろう。
人材の流動化は、こうした弱者の視点のみならず、企業に様々なキャリアを持った人間が集うことで、組織としてダイナミズムを取り戻し収益力が強化され、新たな雇用を生み出すという観点からも、大いに推進すべきであると、基本的には考えている。
とは言え、「そのためには、厳しすぎる解雇要件を緩和すべき」との意見もあるが、ここを緩めると年間3万人の自殺者がさらに増える事態にもなりかねない。やはりここは、マスコミが報じる「終身雇用」の幻想を鵜呑みにせず、自ら「人事異動」を発令せよ、若人よ!
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