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2009年5月30日 (土)

「かんぽの宿」問題、解決したこと、してないこと

 このブログでもっとも多く、話題として取り上げた「かんぽの宿」問題。改めて数えてみたら、過去6回、今回をあわせると7回目の投稿となる。

 思えば、すでに決まっていたオリックス不動産への一括売却に、鳩山総務相が「待った」をかけ、一括売却を白紙撤回させて個別売却に切り替えたところまでは、ずいぶん紙面を賑わしていた気がする。

 そもそも「かんぽの宿」問題、鳩山総務相の行動のどこに問題があったのか?わかりやすくまとめてある記事を見つけたので参照されたい。

辻広雅文 プリズム+one 

「かんぽの宿」騒動に見る“既得権死守”勢力の巧妙かつ公然たる反乱 

 http://diamond.jp/series/tsujihiro/10064/

 その後、日本郵政が「不動産売却等に関する第三者検討委員会」を設置、同委員会は委員会開催のたびに議事録を公表したにもかかわらず、これを報道するマスコミはほとんど(というかまったく)いなかった。その一方で鳩山総務相側のコメントはしっかり報道するものだから、私はマスコミの恣意的な報道姿勢を批判こともあった。

 そして昨日、同委員会は最終報告書を公表、川端委員長は、記者会見において売却の過程で、記録が残っていない、取締役会にて十分な報告がなされていない等の不備はあるものの、違法行為はなかったとの認識を示した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090529-00000867-yom-bus_all

 これに対し、「鳩山総務相は、「内部のお手盛りだ」と批判している」というが、かつての「出来レース」発言と同様、具体的な指摘はなく印象批判をしているのみである。弁護士、公認会計士、不動産鑑定士と、その道のプロ(しかも、各士業の重鎮クラス)が精査し議論を重ねた結果である報告書の中身を、彼は本当に目を通したのか、と疑いたくなる(ちなみに最終報告書も、下記の通りしっかり公表されている)。

http://www.japanpost.jp/information/other/

 さて、これで一件落着と行きたい所だが、むしろ根本的な問題は解決していない。それは、果たして「109億円での一括売却」を「個別売却」に切り替え、全施設の売却が滞りなく進むのか、という点である。

 少なくとも、個別売却をした結果、109億円を下回るようなことがあれば、鳩山総務相に対する責任問題に発展させなければならない。果たしてマスコミは来年、再来年と、この問題を取り上げ続けるだろうか?

過去の投稿記事)

2009年2月 7日 (土) 建設費用=資産価値?

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-e7b7.html

2009年2月14日 (土) 「かんぽの宿」譲渡 白紙撤回は是か?

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-8353.html

2009年2月17日 (火) 坊主憎けりゃ・・・

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-82c8.html

2009年4月 3日 (金) かんぽの宿の結末は・・・

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-f051.html

2009年4月 4日 (土) 「かんぽの宿」問題、マスコミが報じない事実。

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-db6e.html

2009年4月 7日 (火) またまた「かんぽの宿」問題。

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-8fa3.html

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2009年5月21日 (木)

ひそかに浸透しつつある”GPS機能”の是非

 長らく、三洋電機のムービーデジカメ「Xacti」を愛用していたため(過去形なのは、静止画の画質に不満があり、結局フジのデジカメを今は持ち歩いているため)、そのライバル品(?)であるSonyの製品も気になってはいた。

 そんなSONYの縦型ビデオカメラの新製品「HDR-TG5V」が、今春発売された。 

参考記事) 【AV Watch】ソニー、世界最小/最軽量の縦型フルHDカメラ「TG5V」

http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20090402_80283.html

 この新製品で、個人的に余りメリットを感じなかった新たな機能がある。それは「GPS」機能である。記事によると、「付属のPC用動画閲覧/管理ソフト「Picture Motion Browser」で動画を再生する際も地図情報を参照でき、Googleマップの上に撮影ポイントを表示することも可能。」となるらしい。他機種でも、「お散歩が楽しくなる」といった表題でGPSl機能搭載デジカメの紹介がされている。

 http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0810/16/news012.html

 一部のユーザーには魅力的かもしれないが、ほとんどの人にとっては「どうだっていい機能」だ。しかし、映像機器ライターの小寺信良氏は、この機能に対して、むしろ危うさを感じていると言う。

参考記事)【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】第415回:'09年春ビデオカメラ総決算。新技術とトレンドをチェック

http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20090520_169523.html

 小寺氏によると、「個人的にはGoogleストリートビューの問題と同様で、もう少しこの手のGPS機能の是非は、世論で揉むべきだと思っている。というのも、我々モノカキは普段から平穏無事なことばかり書いているわけではないので、うっかりジオタグが付いたままの写真を気づかずにブログにアップしたりすると、行動パターンを把握されて待ち伏せされたり、自宅や家族が危険にさらされるというリスクが生じるからである。」とのことだ。

  ライターに限らず、有名人も「GPS機能付きのデジカメで撮影した画像をブログにアップしたところ、行きつけのお店がばれてしまう」、なんて事態もあり得るのではないか。Googleのストリートビューが、プライバシー侵害の観点からずいぶん議論を呼んだが、GPS機能についても、問題が起きてからからでは遅い。小寺氏が指摘するとおり、その是非をもっと世論で揉むべきだろう。

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2009年5月14日 (木)

『会社に人生を預ける』若者たち

 たびたびこのブログで取り上げているフレーズであり、勝間和代氏の著書名でもある『会社に人生を預けるな』。

 私は、その考えに全面的に賛同する。その理由は、2年前のブログ記事にすでに書いてあった。その要点を述べると、以下のとおり。

 「個人のライフサイクルは長期化する一方、企業・製品のライフサイクルは短期化し、人の人生よりも短くなりつつある。戦後から数十年間は、幸運なことに個人のライフサイクルよりも企業のライフサイクルのほうが長かったため、定年まで一定のスキルで何とかやていけるだろう、という安心感があった。

 一方現在は、企業が安定的に収益を上げ続けられることは益々困難となり、個人においても「この会社に勤めれば、このスキルを身につければ一生安泰」といえる時代はもはや終わった。」

参考ブログ)不透明な時代 2007年1月 4日 (木)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_789b.html

  にもかかわらず、若者の間では「終身雇用」志向がますます強まっているという。日本能率協会が毎年新入社員を対象に行っている調査によると、今春に入社した会社に「定年まで勤めたい」と答えたのは何と42.9%!昨年の33.4%から急増し、過去5年で最高となった一方、「いずれは転職したい」が7.6%、「いずれは独立したい」は5.6%といずれも過去最低を記録したという。

 残念ながら、彼らがいくら希望しようとも、彼らが定年になるまで、企業が今の雇用を保持し続けられる可能性は低い。

 あれだけ賞賛され続けたトヨタでさえ2期連続の赤字が確実、しかも現在の舵取りでは3期連続赤字も危ぶまれる状況である。さらに本日、近年の勝ち組企業であり、中部地域に大きな雇用をもたらしたシャープが、近い将来に亀山から工場を撤退させることを明らかにした。

<シャープ>亀山第2も海外移設 国内生産は堺工場に集約
5月14日2時30分配信 毎日新聞

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090514-00000008-mai-bus_all

 これらのニュースを見るだけで、向こう40年安泰などという会社はありえず、それどころか10年先でさえ見通せない状況だ。確実にいえるのは、今まで日本経済を牽引してきた輸出産業が、米国のバブルと人為的に作られた円安によって、一時的に勢いを取り戻したものの、これらの前提条件が崩壊したことで、本格的な産業構造の転換が、今まさに迫られてきている、ということだ。 

 このような時代に、「一生会社に面倒を見てもらおう」という思考の社員が増えれば増えるほど、企業としては競争力が失われる。自分を捨てて滅私奉公すればするほど、皮肉にも会社に捨てられるリスクが高まる、ということだ。

 どうすれば、そのリスクから回避できるか?正解が転がっているわけではないが、確実に言えることは、『会社に人生を預けるな』。ここからすべてが始まる、ということだ。

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2009年5月10日 (日)

トヨタの経営力って一流?

 5月8日、トヨタの決算発表がなされ、改めて前期の赤字転落に加え、今期も2期連続赤字は避けられない見通しが明らかにされた。

 4月12日のブログに、「直接的な原因は世界的な景況悪化による販売不振と円高による輸出採算性の悪化だが、そもそも短期的な経費削減ではとても追いつかないほど生産能力を増強し、固定費が膨れ上がったということが真因である。」と書いたが、現在トヨタの生産能力は1000万台に対し、今期の生産予定は650万台。実に35%の余剰設備を抱えていることになる。

参考ブログ)自動車産業を支えることは是か? 2009年4月12日 (日)

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-09f8.html

 同日に配信されたロイターの記事によると、渡辺捷昭社長は、「問題や課題を解決する決定度とスピードが十分ではなかったと率直に反省している」と述べる一方で、「今すぐに工場を閉鎖するよりも、もう少し時間を見ながら考えていきたい」ともコメントしている。

「明暗分かれるトヨタとホンダ、過剰生産能力が重荷に」
5月8日21時39分配信 ロイター

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090508-00000039-reu-bus_all

 果たしてトヨタの経営陣は、昨年の判断ミスや決断の遅れを、どこまで真摯に受け止めているのか?少なくとも後段のコメントからは、何ら反省しているとは感じられない。工場閉鎖をしない根拠は、「市場は必ず回復する」との確信からだと言う。

トヨタ、逆襲へ忍耐の時 黒字化は来期、工場閉鎖せず
5月9日8時16分配信 フジサンケイ ビジネスアイ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090508-00000016-fsi-bus_all

 今は、過去の経験則が通じない「非連続」の時代である。「市場は必ず回復する」となどというおめでたい希望的観測を持ったままで、この難局を乗り切れるであろうか?少なくとも現段階では、「車離れが進んでいる」ことを現実として受け止め、いち早く在庫圧縮やコスト削減に取り組んだスズキや、ロシア進出を踏みとどまり、F1撤退をいち早く決断したホンダに軍配が上がっている。

 もしかして、クライスラーに続いてGMも破綻することによって、残存者利益を得ようと見込んでいるのであろうか?そのような事態に陥ったら、残存者利益よりもむしろ、さらなる市場の冷え込みが米国経済を襲い、全世界に波及するマイナス要因のほうが大きいのではないだろうか。

 過去のブログにも書いたように、そもそもトヨタは、自分のコントロール下にある「カイゼン」には滅法強いが、コントロール下にない不確実な未来に対して、決して鋭い洞察力を働かせることを得意としているとは言い難い。今回の、「もう少し時間を見ながら考えていきたい」などという渡辺社長のコメントは、まさにそんなトヨタの体質を象徴している。

 「2期連続どころか3期連続赤字も大いにありうる」、そんな予感を感じさせる、一流(?)企業経営者のコメントであったが、この後を継ぐのは創業家のお坊ちゃま。果たして彼にドラスティックな改革を断行できるのか?判断を誤れば命取りになりかねないご時世である。くれぐれも、日本経済に迷惑をかけないよう、適切な舵取りを期待したいものだ。

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2009年5月 5日 (火)

新卒採用の是非

 たびたびこのブログでも話題に取り上げている通り、高度成長期以来の右肩上がり経済はすでに終焉しているにもかかわらず、むしろそれに逆行するかのように終身雇用制度を希望する若者が増えつつある。しかし、安全を求めれば求めるほど、むしろリスクは高まる。だから勝間和代氏が主張しているように、「会社に人生を預けて」はならない。

 そこで着目すべき点として、終身雇用を期待させる出発点である、”新卒採用”の是非について考えてみたい。個人的な体験から言うと、そこそこの規模、体制の整った企業に新卒で入社したことは、その後の自分の人生にとってプラスであったことから、新卒採用には肯定的な印象を持っている。

過去のブログ記事)

・大企業が人材輩出業たれ!

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-1d37.html

・転職は自主的な「人事異動」だ!

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-236d.html

 しかし、人事コンサルタントの城繁幸氏は、「新卒採用は弊害が多く、無意味化するのが望ましい」との主張をしている。同氏の考察によると、日本で起業が活発でないのは、「新卒カードがあまりにも重過ぎること」であり、「日本において起業するということは、昭和的価値観に歓迎してもらえる唯一のパスポートを自ら捨てることを意味する」からであると言う。

参考ブログ)城繁幸氏ブログ『新卒一発勝負の弊害』

http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/f504efb48ef9d75d0afd68a7b63f6460

 確かに、アメリカのように大学卒業後、ベンチャーを立ち上げる人材は少ないかもしれない。私の知り合いにも1名、大学卒業後にすぐに会社設立、という女性もいたが、非常にまれなケースだ。しかし、日本社会にとっては、「大学卒業してすぐの起業家が少ないこと」よりもむしろ、「いったん新卒のレールから外れてしまうと、正規雇用のレールにのることが極めて困難であること」の方が、はるかに問題として大きいのではないかと、個人的には考えている。

 特に悪質(あえて言う)なのはキヤノンなど大手製造業で、明らかに長期雇用しているにもかかわらず、派遣から請負など、あの手この手で契約内容を切り替え、正規雇用を頑として受付けない企業姿勢には、首を傾げざるを得ない(この点は、『偽装請負』や、『雇用融解』などの書籍に生々しい事例が紹介されている)。

 なぜ大手は、こうした明らかな”非正規雇用者差別”を行っているのか?もちろん、環境変化に対する労働需給調整、という意味合いもあるが、正社員言えども工場閉鎖ともなれば解雇されることもありうるわけで(昨日のNHKニュースでも、パイオニアのプラズマディスプレイ工場が閉鎖し、職を失った熊本県出水市のパイオニア正社員が紹介されていた。)、何ゆえそこまで正社員かを拒むのは解せない。

 その根底にあるのは、骨の髄まで”終身雇用”に染まりきっている人間が、現在の大手経営者・経営幹部として製造業の中枢を担っているからではないだろうか。NIRA研究報告書の緊急提言『終身雇用という幻想を捨てよ』によると、製造業、とくに大手ほど長期雇用の傾向が著しく、従業員1000人以上の製造業においては、50歳~54歳の男性社員の平均勤続年数は30.2年、55歳~59歳の平均勤続年数は33.7歳と、見事なまでに”終身雇用制度”にどっぷりつかったムラ社会の人間で構成されていることがうかがい知れる。

参考)

NIRA研究報告書 緊急提言『終身雇用という幻想を捨てよ』

http://www.nira.or.jp/outgoing/report/entry/n090406_330.html

 ちなみに城繁幸氏と私とは、1973年生まれの同学年だが、彼は新卒後、まさに”終身雇用制度”の価値観にどっぷり浸かった会社で働いていたのに対し、私は地方の中堅スーパーという、”終身雇用制度”とは比較的縁の薄い企業で働いたため、新卒の是非に対する見解の違いにとして現れているのだろう。

 また、現在中小企業診断士として、日々中小企業の現場に立ち会うことが多いが、企業人として訓練が施されていない人材だけでは、(一応は株式会社であっても)個人事業の壁をなかなか破れない。やはり、そこに外部の血、特に中堅以上の企業経験者が経営幹部として入社し定着することが、企業として着実に成長・発展を遂げることの必要条件ではないか、という実感がある。ゆえに、「大企業が人材輩出業たれ!」という主張を行う訳である。

 話は少しそれたが、大企業(特に製造業)においては、あくまでも”終身雇用制度”を前提としつつ、環境変化に対して配置転換や出向などで雇用調整を行ってきた訳だが、右肩上がりがもはや望めなくなった1990年代以降、もはや終身雇用を前提とした雇用調整は不可能となった。したがって、老いも若きも、「終身雇用を希望する」というナンセンスな幻想を持ち続けることは、日本経済にとっても個人にとっても、「百害あって一利なし」であることを、我々は早く自覚する必要があるだろう。

 度々紹介している池田信夫教授のブログによると、「需要の変動に対応して雇用調整を行なうメカニズムが、解雇(50年代)、配置転換(60年代)、出向(70年代)、非正社員(90年代)と変化してきたのである。このうち出向までは日本的雇用慣行の枠内の調整だが、90年代以降はそうした調整メカニズムが機能しなくなっているため、雇用調整が円滑に行なわれない。」との現状を踏まえ、

 「現代の最大の問題は賃金の分配ではなく、正社員と非正社員の身分格差が固定し、正社員も社内失業しているという人的資源の浪費である。80年代まではかろうじて雇用調整のバッファとなっていた系列構造が崩壊した今は、労働者の選択肢を広げる多様な雇用契約が必要だ。」と主張している。

参考)池田信夫ブログ『雇用調整のメカニズム』

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/1d2ad3efc240ee1992fcb2203ed1f9f3

 最後に、前述の城繁幸氏のブログに興味深い調査結果が紹介されていた。

「高橋俊介氏(慶応大)のマネジメント論に、いくつか興味深い視点が述べられている。 ~中略~ 六大学対象の調査で明らかになったという、「自分に自信がある学生ほどリスク型の就職を目指し、自信の無い学生ほど安定志向である」という結果。」

「年功序列制度とは要はその年齢層の平均賃金のことであり、平均以上の人は損で、平均以下の人材にとっては美味しい仕組みなのだから、こうなるのは当然である。自動車や電機の採用担当者の中には「最近の学生はバカになった」と嘆く人がよくいるが、自分の会社が割に合わない会社に成り下がっただけだ。学生は合理的な選択をしているにすぎない。 ~中略~ リスクを取りたい優秀な学生(ただの自信過剰かもしれないが)は間違いなく増えている。」

 この調査結果を見ると、トータル的には安定志向が強まっているとはいえ、リスクをとりたい優秀な学生が新たなダイナミズムを呼び起こし、次代の日本活性化に寄与するのではないか、という期待感を抱かせる。同氏は、「彼らのふつふつとたぎるマグマを受け入れてくれる器がなかなか存在しないこと」を懸念材料としているようだが、私はそれほど心配しない。大企業で基礎力を蓄えつつ、しかるべき時期が来たらそこを飛び出せばよいのだ。結論として、前回のブログと同じフレーズで締めくくりたい。

 自ら「人事異動」を発令せよ、若人よ!

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2009年5月 3日 (日)

転職は自主的な「人事異動」だ!

 ついに米国ビッグ3の一角、クライスラーが破産法を申請した。同社と日本メーカーとの取引はごくわずかで影響は限定的、とのことだが、これがGMとなったら対岸の火事という訳にはいかないだろう。リーマンショック以上の大波が、世界中に押し寄せることを覚悟しなくてはならない。

 度々ブログでも書いているように、こうした不透明感が増すにつれて、日本の若者(とその親?)は、ますます安心・安全志向に陥り、大手志向・公務員が高まりつつある。社会経済生産性本部が新社会人に対して毎年行っている調査によると、「今の会社に一生勤めたい」とする回答は4年連続で上昇、2008年には過去最高を記録したという。

 しかし、安全志向の人間が集まれば集まるほど、その組織は硬直的になり環境変化に適応できず、業績は傾いていく。そして、その組織にぶら下がっていた人間ほど、会社から放り出される可能性は高くなり、次の職にありつけず途方にくれるリスクは、今後ますます高まるだろう。

 そのような意味合いにおいて、勝間和代氏の『会社に人生を預けるな』に、私は大いに賛同し、「終身雇用にもよいところがある!」、「終身雇用は日本の文化だ!」と声高に唱えるものに、違和感を覚えているのは、度々述べてきたとおりだ。

 個人的には、大学卒業後の12年間で3回の退職届を出したが、これは社会と自分との関係の最適化を図るための、自主的な「人事異動」であると考えている。一般的に人事異動は会社・組織の命令によってなされる訳だが、これはあくまでその社内、組織内の異動に過ぎない。自分と社会との係り合いにおいて、その会社・組織にいる必然性が薄れ、より自分を必要としているステージが他にあるとの判断がつけば、自ら「人事異動」を発令するという選択肢は、(リスクは伴うものの)大いに推奨すべきである、と個人的には考えている。

 自分の場合、「成功」という結論を出すには、いささか早すぎる年齢ではあるが、少なくとも一つの会社にいただけでは、とても出会うことが出来ないような様々な業界・世代の人たちと出会うことができ、仕事で揉まれ経験を積む中で、成長につながる多くのことを得ることが出来た、と実感している。

 そしてその出発点として、そこそこ規模が大きく、人材育成の土台があった企業で社会人の基礎や社会の仕組みを学ぶことが出来たのは、非常にありがたかったと感じている。ゆえに、社会学者の山田昌弘教授の主張とは反対に、「まずは大企業に就職し、そこで基礎を学んだ者が、どんどん会社を飛び出していくことが日本社会全体にとって好ましいのではないか」、とのブログ記事を以前書いた訳である。

参考ブログ)『大企業は人材輩出業たれ!』

http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-1d37.html

 しかし、世間は依然として終身雇用を基本的に肯定し、それが望ましい社会のあり方であることを前提として、政策やニュースの論調が推し進められている感は否めない。池田信夫教授が指摘しているように、「終身雇用と呼べるような実態は従業員1000人以上の大企業の男性社員に限られており、その労働人口に占める比率は8.8%にすぎない。」にもかかわらず。

参考ブログ) 池田信夫 blog「終身雇用という幻想を捨てよ」http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/bd13735ee5e9dfbda0f5855a522a8016

 これは、経済界の中枢や日経新聞や経済誌を始めとしたマスコミ、政治家・官僚などが、(公務員は含まれてはいないが)労働人口の8.8%に過ぎない終身雇用の世界に生きており、自分たちの世界の話が、日本の企業全体の共通した話であるように勘違いしていることに、原因があるのではないか。

 そしてその勘違いが迷惑なことに、マスコミ報道や政策の基本思想に組み入れられてしまい、終身雇用とは関係のない世界の人たちまで、あたかも「日本社会は終身雇用である」と信じ込んでしまっているとすれば、迷惑な話だ。「終身雇用があるべき姿である」、とされるがゆえに企業は雇用維持を求められ、既得権益は保持され、そのしわ寄せが弱者に行くこととなる。

 「なぜ若者は3年で辞めるのか」の著者である城繁幸氏も、「内定取り消しだけを規制するというのは対症療法」に過ぎず、「根本的な原因療法としては、流動化を進めて年齢給を無くし、内定者だけが切られることのないようにする」べきである、述べている。

城繁幸氏ブログ 『内定取り消し問題の本質』
http://blog.goo.ne.jp/jyoshige/e/d60214e968230bc98dc9634e15cb66a1

 公表というペナルティが科せられることで、今後「内定取り消し」そのものは減るかもしれないが、そうでなくとも採用人数の絞込みまたは新卒採用ストップという手法で、今期の新卒者が厳しい状況に立たされるのは間違いない。現在、例年になく学生が内定確保に苦戦しているのは、これは採用枠が狭まったことに加え、企業をとりまくマクロ環境がどう転ぶか分からず、今の段階で内定を出して取り消し、という事態を何としてでも防ぎたい、という姿勢の現れであろう。

 また、派遣社員・請負社員を含めた非正規雇用者は、いったん非正規雇用に転じたら正規雇用者の這い上がるのが困難である、という状況も相変わらずで、その原因の一つに正社員(特に中高年層)が既得権益化し過ぎているというのは、異論のないところであろう。

 人材の流動化は、こうした弱者の視点のみならず、企業に様々なキャリアを持った人間が集うことで、組織としてダイナミズムを取り戻し収益力が強化され、新たな雇用を生み出すという観点からも、大いに推進すべきであると、基本的には考えている。

 とは言え、「そのためには、厳しすぎる解雇要件を緩和すべき」との意見もあるが、ここを緩めると年間3万人の自殺者がさらに増える事態にもなりかねない。やはりここは、マスコミが報じる「終身雇用」の幻想を鵜呑みにせず、自ら「人事異動」を発令せよ、若人よ!

 

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