「足し算経営」の日本メーカーに未来はあるか??
昨日に続いて、またまたネットブック(ミニノート)の話題。
昨年夏にASUS社のEee PCが大ヒットして以来、わずか5万円&1kg前後のミニノートPCがヒット、参入が相次ぐ中、東芝やNECなど日本メーカーが苦戦していることは、既に述べたとおり。
参考ブログ)
『中途半端なやなぁ~』(2008年10月16日)
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-a720.html
『デザインの威力とブランド力過信の危険性』(2008年12月14日)
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-c647.html
この春、東芝がネットブックに遅ればせながら「dynabook」のブランドを冠して発売したのに続き、シャープと富士通の参入が発表された(厳密には富士通は、もっと小型のPCを市場投入しているが、いわゆる”ネットブック”の発売は、今回が初)。
参考ブログ)『今さらdynabook』(4月20日)
http://noir-kuon.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/dynabook-7536.html
【PC Watch】 富士通、同社初の国内向けネットブック「LOOX M」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20090421_127862.html
【PC Watch】 シャープ、光センサー液晶搭載のMebius
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20090421_152786.html
プレスリリース記事から読み取れるのは、両社とも従来のアジアメーカー製品の差別化を意識する余り、”足し算経営”による機能追加が図られている、という点である。具体的には、富士通の「LOOX M」には、全14種類の電子辞書機能が備え付けられている上、『最初から多彩なセキュリティ対策ソフトが搭載されている』との謳い文句で、なぜかウイルスバスター2009とノートン インターネットセキュリティ2009の2本がが90日間限定でインストールされている。 インターネット環境につなげられれば、電子辞書機能など不要だし、そもそも何故セキュリティソフトが2本バンドルされているのかが理解不能だ。
シャープの「Mebius(メビウス) PC-NJ70A」は、どこまでニーズがあるのかわからない『光センサー液晶パッド』を搭載、これによって『ペンによる絵や字の手書き入力や、複数の指でのマルチタッチ(ジェスチャー)操作による表示内容の拡大・縮小、回転が可能』となる、とのことだ。さらにこちらも7種類の辞書ソフトを始めとしたソフトウェアが、ごっそりインストールされている。
光センサー液晶パッドによる操作感覚の面白さは、iPhoneやニンテンドーDSのヒットも考えると、新たな可能性を秘めているかもしれない。しかし、8万円前後の価格や、1.46kgとやや重めの筐体であることも考慮に入れると、すでに店頭に並んでいる同型のライバル製品は4万円前後、軽いものは1.0kg~1.2kgのものもあり、これら製品に対して圧倒的な優位性があるといえるのかどうか、疑問が残る。
両社とも良かれと思って搭載しているソフトウェアの数々は、むしろユーザーにとっては「その分、高い買い物をさせられているのではないか」という不信感につながってしまうのではないか?PCを買ったとき、「これでもか」と言わんばかりのソフトウェアの数々でデスクトップが埋め尽くされた、あの感覚に抵抗を覚えるユーザーは、決して少なくないだろう。
そもそも、これだけネットブックがヒットしたのは、機能を必要最小限に抑えたことによって実現した圧倒的な低価格と、持ち運ぶのに苦にならないほどの大きさ・軽さが、本質的な要素である。にもかかわらず、これら日本メーカーは、相変わらず(ユーザーが強く求めていない)機能強化によって(自己満足の)高付加価値化を実現、それを根拠とした割高製品を市場に投入しようとしている。
ようやく「この春に新製品を投入できた」という企業としてのフットワークの重さと、従来の”足し算経営”の発想から抜け出せない日本メーカーを尻目に、ASUS社やACER、HPなどは、コンシューマー市場に加えてビジネス市場への進出も進めつつある。ネットブック市場は、「モノづくりの強さ」や従来の「知名度・ブランド力」だけでは勝てない、との認識に立たない限り、これからも日本メーカの苦戦は続くだろう。
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