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2008年1月14日 (月)

自由と公共の福祉の狭間で

昨年奈良で起きた「駆込み妊婦流産事件」以来、救急患者のたらいまわしが大きな問題としてクローズアップされている。マスコミやとかく医療機関および医療関係者を悪玉とし、それを非難することで解決を望んでいるようだが、事態はもっと深刻のようだ。

「医療崩壊」に関わる書籍を数冊読んだが、第三者によってかかれた『貧乏人は医者にかかるな!―医師不足が招く医療崩壊』(永田宏著)は、非常に説得力のある内容であった。国の政策ミスと我々国民の医療機関への過度な期待によって、医療関係者を追い詰め、医師不足に拍車をかけ、確実に医療崩壊が進行しつつある、というのが本書が訴えかけたい内容である。具体的には下記のとおり。

①国の政策ミス

・医療法における人員基準(住民辺り医師数の基準)が、いまだ昭和23年策定時のまま。しかも、医師数の最低基準を定めたはずなのに、それが標準値となり、いつの間にか「医師数抑制」を推し進めるための上限値になってしまっている。
・厚生労働省は、「医師数は過剰、偏在だけが問題」といったん表明した手前、数字のボロが出たら65歳まででカウントしていた医師数を、いつのまにか年齢上限なしでカウントし、あくまで「医師不足でない」と言い切る欺瞞ぶり。

②我々国民が医療関係者を追い詰める。
・医療訴訟で医師を追い詰めることで、外科・産科など危険な分野がますます敬遠され、現場がますます疲弊してミスを誘発するという悪循環となっている。
・安易な救急車への通報が増え、肝心な患者を救えない皮肉な結果となっている。

そしてこれらに加え、病院の勤務医減少に拍車をかけているのが、04年に始まった「新医師臨床研修制度」である。この制度改訂によって、2年間の研修を義務付けられた新人医師が個人の「自由意志」で研修先を選択できるようになった。この結果、地方の大学では母校の病院に残る新人が激減、そのしわ寄せが現勤務医にのしかかり、ますます激務に、その激務を逃れるため独立開業、さらには医療界そのものからドロップアウトする医師が増えているという。

昨今、「個人の自由意志」と「自由市場における競争」が最適化をもたらし、世の中をよりよい方向に導いてくれる、という幻想がまことしやかに吹聴されていきた。しかし、「医療」という公共性をもつ世界においては、「野放図な自由」だけでは人々は幸せになれない、そのことをよく考え直す必要があるのではないか。

今後、ますます救急患者のたらい回しによる悲しい事件は増えることはあっても減ることはないだろう。マスコミや政治は表面的な対策に終始することなく、その深層にまで入りこみ根本的な対策を打ち出すことを望みたい。

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